昔から伝わる伝統的な農法で
“世界一美味しい胡椒”を復活 

クラタペッパー

(カンボジア・プノンペン)



海・島・里からの便り
2015年
『life170号』

 古くは、13世紀アンコールワットの時代から生産されているカンボジアの胡椒。19世紀の大航海時代には、ヨーロッパにも伝わり、“世界一美味しい胡椒”と賞賛されていました。しかし、残念なことに1970年から始まった内戦によってカンボジアの胡椒農園は壊滅的な打撃を受けてしまいました。
 1992年にNGO のボランティアとして初めてカンボジアに入った私は、20年にも及ぶ内戦で産業が破壊され、周辺の東南アジアの国と比べると何もかもすべてが時代に取り残されてしまっている様を目の当たりにしました。農業国と胡椒の木から手摘みで収穫してまず何か一品でも他の国に誇れるものを作りたいと思い、1995年から現地の人達と一緒に昔から伝わる伝統的な農法で胡椒の生産を再開しました。栽培は順調に進んでいくのですが、日本への輸出はなかなか軌道に乗りませんでした。2004年の結婚を期に、カンボジアの首都プノンペンに小さなお店を構え、カンボジアを訪れる外国人のおみやげとして販売をすることにしました。カンボジアの胡椒の評判が少しずつ伝わっていったことで、デンマークやフランス、日本などからもだんだんと注文をいただけるようになり、2013年に念願の日本支店を開設することができました。
 胡椒はツル科の多年木で、苗木を植えてから約5年で本収穫ができます。花は直径1mm 程のとても小さい白い4枚の花弁を持ち、房状の花芽に20数個の花が連なって、6月から7月頃に咲き始めます。着果した小さな実は、約8ヶ月かけて6mmほどの大きさになり、翌年の2月から3月頃(旧正月を過ぎた頃)に収穫期を迎えます。めいっぱい膨らんだ熟す直前の緑色の果実を天日に1週間ほど干して、乾燥させると、美味しい黒胡椒になります。
 今年の胡椒は、乾季に入ったのが昨年の12月で、畑の空気が乾燥している期間が長かったため、粒の大きさは例年より少し小粒ですが、旧正月を過ぎた2月末頃から少しずつ熟し始め、ようやく収穫期を迎えました。
 黒胡椒の特徴は、その皮の部分に含まれる揮発性の香りと、果肉の中にある核に含まれる辛味です。特にカンボジアの胡椒は、その皮に含まれる柑橘系の香りの強さにあります。私たちは、その中でも特にこだわって、無農薬で育てて一粒ずつ手摘みで収穫し、さらに良質な粒だけを手選別して厳選してパッキングしております。フレッシュで良質なカンボジア産黒胡椒をぜひ一度お試しください。

(クラタペッパー 倉田浩伸)



最高品質の黒胡椒です
柑橘系のフレッシュな香りが強く、肉料理の洋食だけに限らず、和食や中華など、どんなお料理にもよく合うのが特徴です。
※粒なのでお手持ちのミルで挽いてください。
クラタペッパー
無農薬ブラックペッパー(粒)
 


 

クラタペッパー

 (カンボジア)


世界一おいしい胡椒を再び

 


 

 私がカンボジアに興味をもったきっかけは、1985年に映画『キリング・フィールド』を観たことでした。その後、湾岸戦争を機に、なにか貢献をしたいとの想いからNGOに参加し、翌年にカンボジアへ派遣されました。
 カンボジアは70年代の内戦のため、インフラも産業も人材も何もかもを失ってしまい、その再建にはさまざまな分野からの支援が必要でした。一人の日本人として“何ができるか!?”を模索する中で、この国の農業の立て直しをしたいと考えるようになり、1994年に起業を決意しました。ちょうどその頃、内戦前にカンボジアを訪れていた祖父から、60年代の貿易資料を譲り受け、そこに当時のカンボジアの主力農産品の記載があり、その中のひとつに「胡椒」がありました。
 カンボジアの黒胡椒は、挽いた際に広がるその柑橘系の芳醇な香りから、60年代にはヨーロッパで最高品質と評価されていました。しかし、内戦で農園は壊滅し、人々の記憶から忘れ去られていました。一度は消滅した、その「世界一おいしい胡椒」をもう一度復活させたい。そのために、内戦以前の胡椒産地の農家を回るなかで、コッコン州スラエアンバルで極わずかながら栽培を再開していた地元の人々と出会い、彼らと共に自社農園を開業しました。
 私が最もこだわったのは、安全で高品質な胡椒を生産することです。そのため、カンボジアに古くから伝わる伝統的な農法で栽培を続けています。2011年1月にはカンボジアオーガニック農業協会より、カンボジアの農産物の中で初めてオーガニック認定を取得しました。
 世界一と誇れる胡椒を通じて、カンボジアの産業をこれからも育成し続けたい。そして世界中にカンボジアの良さをこれからももっと広めて行きたいと思っています。

 

(クラタペッパー 倉田 浩伸)


収穫前の胡椒、胡椒の選別、胡椒農園にて倉田さん

 

閉じる