ルーマニアの地域社会再生を目指す
オーガニックワイン造り 

クラマ・デルタ・ドゥナーリ


(ルーマニアでのディ・フィリッポのプロジェクト)




海・島・里からの便り
2016年
『life360号』

<ルーマニアワインプロジェクト>
 私がルーマニアと関わるようになったのは2009年春、ルーマニアに住むイタリア人の友人に招かれ、初めてこの国を訪問したのがきっかけでした。ルーマニアは長いワインの歴史を持ち、紀元前100年前、古代ローマ帝国が作成した、ルーマニアにおけるワイン製造に関する法律が発見されるほどです。ところが、ルーマニアはチャウシェスク時代の圧政、その後の急激な経済発展に伴う格差拡大などで、人々は貧しく、治安が悪い状態が続いています。
 そこで、歴史あるワイン造りを盛り上げれば多くの人の働く場になると考え、ドナウ川河口近くのブドウ畑を購入しました。そして、地元の固有品種を地道に有機栽培を続けた結果、今では、一緒にブドウの有機栽培に関わってくれる地元の小規模生産者も現れました。
<プロジェクトの基準>
 このプロジェクトは、イタリアでのワイン造りと基本的に同じ方針です。ルーマニアでの会社設立後、すぐに有機農業認証を申請しましたが、2009年当時の現地では非常に新しい出来事でした。ルーマニアでは、大企業による化学肥料や農薬が中心の集約農業が主流だったからです。
 加えて、基本的に仕事は機械任せにせず、積極的に地元住民を雇用することにしています。働き口を求めている人がたくさんいるここでは、設備投資より人に投資する方が意味があると考えています。地元にお金を落とすことが大切なのです。
<プロジェクトの現状>
 ワインの出来は良く、この地域は特に白ワインの製造に適していると感じています。小さな醸造所ですが、2012年、2014年にはルーマニアの最優秀ワインとして評価されました。イタリア、ウンブリアの畑とは全く異なるテロワールを発見し、そこで最高のワインを作ることができたことは何よりの報酬です。
 技術的には、馬を活用したり、ブドウ畑にハーブを植えるなど、イタリアで培ってきた方法をルーマニアでも一部実践しています。これらの技術は、低コストで導入、運用ができるので、経済的に貧しい地域では非常に効果的だと感じています。


ロベルト・ディ・フィリッポと
クラマ・デルタ・ドゥナーリの皆さん

 そして人材育成。この7年間で、盗難、詐欺などの苦い経験もしましたが、スタッフも含めて大勢の人が困難な人生を歩んできていることを自覚しました。ここ数年で安定した人材が育ち、良い流れになっています。
 ルーマニアプロジェクトは、お金は少し、ノウハウはたくさん、そしてまだまだ助けが必要なプロジェクトです。もしよつ葉の皆さんがこのプロジェクト、ワインに興味を示してくれれば、オルタナティブな発展、生態学的・社会的に持続可能なモデル形成の助けになると考えています。  

( ロベルト・ディ・フィリッポ)



フライパンの鍋肌に落すとさらに香ばしく
クラマ・デルタ・ドゥナーリ
フェテアスカ・レガラ 白2014
バベアスカ・ニグラ
赤2014


 
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