
2016年
『life370号』
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❶ひじきとはどういう海藻ですか?
ひじきは潮の満ち引きにより、岩場が海に浸かったり、干上がったりする“潮間帯”で生息する海藻の1つで、ホンダワラの仲間。日本では沖縄から北海道まで、ほぼ全国の磯で見られます。
❷主な産地はどこですか?
実は、出回っているひじきのほとんどは海外産です。2015年産では、中国産が約50%、韓国産が約38%、国内産が約12%(当社資料)です。国内の産地としては、三重県、長崎県、千葉県、和歌山県などで太平洋側の方が良く採れるようです。
そして中国・韓国産のほとんどは養殖。逆に国内産のほとんどは天然です。
❸天然と養殖の違いは何ですか?
天然は岩場の“潮間帯”で育ちますが、養殖は静かな海に“浸かりっぱなし”です。その違いが、実の入り方、形の違いなどに影響し、養殖はプクッと気泡入りが多く、天然は実の詰まった棒状が多いです。しかし、それを見分けるのはプロでも難しいかも知れません。
❹いつ頃、どのようにして収穫しますか?
毎年4月〜5月に1年分のひじきを刈り取ります(海外産の養殖は4月〜6月)。岩場に繁茂した天然ひじきを海女さんや漁師さんが鎌を握りしめ、1本1本刈り取っていきます。更に、海から陸へ揚げる作業が大変な重労働で、高齢化・過疎化している地域では採集量が年々減っています。この刈り取りの時期をゴールデンウィークなどに合わせて、県外に住む子どもたちが帰郷した時に手伝ってもらえるような取り組みを行っている町村もあります。
❺収穫後はどのような工程を経て商品になるのですか?
収穫後の流れとしては、収穫〜すぐに天日乾燥〜異物除去〜洗い〜蒸し〜機械乾燥〜異物除去〜袋詰め、となります。ひじきは異物との戦いでもあり、異物除去には本当に労力と神経を遣います。もう1つ、案外皆さんに知られていないのは“蒸してある”ということ。手元に届いた商品は全て一度熱が通った商品です。それを知るだけでも料理レパートリーは一気に増えると思います。
❻今年のひじきは不漁だそうですが、何が原因ですか?
今年は暖冬が、ひじきを含む海藻類全般に影響を及ぼしました。伊勢志摩産はこれに加えて『伊勢志摩サミット』による漁制限(収穫最盛期に漁期が終了)が少なからず影響を与えました。
ここ数年、漁獲量はやはり減少しています。温暖化の影響で海水温が高くなると良いひじきは採れなくなります。また、他の海藻も死滅してしまった岩場(“磯焼け”と呼ばれます)では、ひじきの胞子が着床できなくなります。
…それでも、ひじきは昔から日本人に食べられてきた『ザ・日本食材』です。日本人に不足しがちな栄養素をバランス良く補う役目を担っております。長期間保存ができ、水戻しした時に『旬』を味わえる“魔法の食材”なのではと思えてなりません。
一方で、良いものと悪いものの差が大きいのもひじきの特徴。せっかく食べるなら、貴重な国内産の品質の良いものをお召し上がりください。
( 北村物産 木下 友誌)