ひろはちどう |
廣八堂(福岡県朝倉市) 葛の魅力を後世に |
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福岡県朝倉市に本社を構える廣八堂は、創業130余年。本葛粉・蕨粉・甘しょでん粉を製造しています。中でも国内産の本葛粉に力を入れています。
秋の七草のひとつとして知られている葛は、山野・荒地に多く自生。繁殖力が旺盛でツルの長さは10メートル以上にも達し、地下にはイモ状の巨大な塊根を作ります。根は、食用や漢方薬に、葉は家畜の飼料に、ツルは布の繊維に、花は民間医療の素材にと古来、余すところなく活用され、日本人の暮らしに深い関わりを持ってきました。中でも根からとれる本葛粉は、きめ細かく質の高いでん粉で、独特の風味・粘り・透明感があり、また素材の旨味を引き出す力もある、貴重な食材として重要な役割を担っています。
わたしたちは大隅半島を中心とする鹿児島県内、宮崎県内で活躍する約300人の掘り子(葛の根を専門に掘る人)たちが掘り出した大小の葛根を鹿児島県垂水市にある工場に集め、風味豊かな真っ白い葛粉に生まれ変わらせます。
葛根を洗浄し粉砕。そしてふるいで、でん粉液と繊維に分離します。でん粉液を水にさらして不純物を洗い流す工程を何度も何度も繰り返していくと、真っ白な葛に変わります。そして脱水後、紙を敷いた上に葛を並べ乾燥させます。葛根から本葛粉ができ上がるまで約1ヶ月の時間を必要とする、とても手間のかかる作業です。また、葛は1kgの葛根から100gしかとれません。
わたしたちは葛根の集荷から精製、加工、仕上げ、製品開発までの全工程を自社で行っています。それはお客さんの口に入るものだから最後まで責任を持ちたいという想いの現れでもあります。
近年では国産に代わって外国産のものが多く出回るようになりましたが、先人から受け継いだ葛の魅力を後世にしっかりと伝えていくことが、日本の伝統食文化を守ることにつながるものと自負しています。
(廣八堂 田口 和博)
葛根を掘り起こす 葛の花