イカ・カニの歴史的高騰に
悩まされた1年でした  

福栄

(鳥取県境港市)

 




海・島・里からの便り
2016年
『life530号』

 

【紅ズワイガニ】

 鳥取県境港で水揚げする紅ズワイガニ漁船は計11隻。35年前と較べると3分の1以下に減りました。資源保護のため、9年前より船の大きさなどで漁獲量の上限が船毎に割り振られるようになりました。例えば、私たちの自社船・第55吉丸は年間900トンです。2年前迄は各船とも上限枠をほぼ100% 消化していましたが、昨年度は漁獲量が減り過半数の船が上限枠に満たないまま漁期が終わりました。その影響で相場が高騰し、昨年度は史上最高値の相場となり、紅ズワイガニの加工場は悲鳴を上げた1年でした。


「吉丸」乗組員の皆さん

 そしてこの9月より新漁期がスタートしましたが、各船とも悪かった昨年よりさらに水揚げ量が2〜3割減となっているのが現状です。当然相場は高かった昨年を上回り、更なる高騰が続いています。その影響で境港の加工場では、止むを得ず値上げした上で取引先を限定、若しくは取引数量を調整、さらには取引休止というような事態が発生しています。こうした事態は漁師さんたちにとっては相場が高くて喜んではいるものの、水揚げ量の減少、将来の資源に対する不安があります。そして、加工部門にとっては、相場高騰で値上げに踏み切らざるを得ず、現状に苦悩しているところです。
【ムラサキイカ】
 自社のイカ釣り漁船(第2・第88吉丸)の1年の操業サイクルは1〜2月(冬漁)と5〜7月(夏漁)は太平洋でムラサキイカ(アカイカ)漁を、8〜12月は日本海でスルメイカ(真イカ)漁をおこないます。
 ところがムラサキイカ漁は、昨年から魚群の反応が悪く、今年の冬漁は1隻も出漁できませんでした。更に夏漁も水揚げ量が昨夏より1?2割減少したこともあり、相場価格は昨年より3〜5割上昇しています。
【スルメイカ】
 そして何と言っても今年一番驚愕した出来事は、スルメイカの過去に例のない歴史的高騰です。吉丸も漁獲する船凍スルメイカ(刺身などの加工原料)は、8月末より新物の入札が始まるのですが、今年は昨年の平均相場を5割以上も上回る価格でスタートしました。いずれ下落するだろうとの予想に反して日に日に価格は上昇し、11月中旬現在、昨年の2倍、5年前の3倍です。高騰の最大の原因は北海道沿岸及び太平洋側での過去に例を見ないほどの大不漁です。この大不漁によって八戸では工場閉鎖に追い込まれたイカ加工メーカーもあると言われています。
 私たちは所有船があるので原料確保は大丈夫ですが、このような相場では納価の設定がままならない状況で、商品によっては休止や値上げをお願いしているところです。
 日本全国でいろいろな加工を施され、皆さまに食されているイカが、来年は豊漁とはいかないまでも、ある程度水揚げ量が回復することを切に願っています

(福栄 岩田謙二郎)

 

カニ本来のおいしさ
紅ズワイガニの棒身。薬品等不使用で獲れたての味です。

  福栄
  かに棒身


柔らかいのでいろいろな料理に
ムラサキイカを使用。
使いやすいバラ凍結の少量規格。
  福栄
  イカ切り身


船上凍結で鮮度が良い
 福栄
 吉丸のいかリング
スルメイカを船上で凍結。
食べやすくリング状にカットしました。



「ふるさと納税」で上位ランキングの境港市
 お目当ては何と紅ズワイガニ!  

福栄

(鳥取県境港市)

 




海・島・里からの便り
2015年
『life440号』

  紅ズワイガニは、北海道から島根県沖にかけての日本海及び銚子以北の太平洋沿岸の深海に生息するカニで、日本海では主にカゴ網によって漁獲されます。


福栄が所有する漁船、
第55吉丸のカゴ網漁

  日本海に生息する紅ズワイガニは、水深500mから2700mの水深帯に広く分布しています。本ズワイガニ(松葉ガニ、越前ガニ)と較べて深いところで漁獲されるため、紅ズワイガニ漁は比較的大型船が多く、またその殆どが加工用に使われるために、港が大きく加工設備が多くある境港に水揚げされます。日本海で漁獲される紅ズワイガニの約6〜7割、更に北海道・秋田・新潟で水揚げされる一部も境港に搬送されますので、国内で水揚げされる約8割が境港加工になります。


鳥取・境港に水揚げされる
紅ズワイガニ

 このように境港は紅ズワイガニ漁及び加工の中心地とも言えますが、ピーク時の1984年頃にカニカゴ漁船40隻、水揚げ量約4万トンあった頃から比べると、現在は漁船11隻、約1万と4分の1に減っています。他の魚種と較べて寿命は長いようですが、卵から孵って漁獲対象(甲幅9cm 超)に達するのに約10年かかるので、乱獲しないように資源管理が厳しく行われています。
 そんな中でここ2〜3年、紅ズワイガニの需要が大幅に伸び、かなり品薄になってきています。その要因の一つがなんと、最近テレビでもよく取り上げられている「ふるさと納税」なのです。この制度は、一定金額以上を特定の自治体に税金として納付すると、その特典としてご当地の商品がプレゼントされるというものです。
 全国で一番人口の少ない鳥取県、その中で人口約3万5千人の境港市が、「ふるさと納税」金額では全国約1700自治体の中で2013年度が第8位、2014年度が第12位と、驚くべきランキング上位に位置し、プレゼント商品の申し込みが殺到しています。そして、その商品の目玉が、紅ズワイガニ製品と松葉ガニなのです。
 その影響で一昨年より紅ズワイガニが品薄になり、高騰しています。私たちにとっては、自社で所有している漁船=第55吉丸から見れば売り上げ単価が上がって喜ばしいのですが、買付業者・加工業者としての福栄にとっては、厳しい状況です。
 これまで紅ズワイガニは、しっとりとした身で柔らかく甘みがあり、何より松葉ガニ(越前ガニ)と比べて安価で、庶民的なカニとして親しまれ、人気でした。それが今後、“高嶺の花”になりそうな勢いで、私たちとしては少し不安です。上記のような事情で今回、残念ながら少し値上げさせていただきましたが、今後もシーズンに1〜2度は私たちが自信を持って選んだ境港産浜ゆで紅ズワイガニをお届けできることを願っています。
 「さばき方」を添付してお届けいたしますので、是非そのまま豪快に食卓でお楽しみください。

(福栄 岩田謙二郎)

 

   福栄
 吉丸の
 茹で紅ズワイカニ
自社船吉丸で獲った紅ズワイカニを茹で上げ、そのままご自宅まで直送します。茹でたての美味しさをどうぞ。
※10月27日(火)〜11月3日(火)の間に、いつものお届け先に宅配便にて直送します。届いた日の翌日までにお召し上がりください(事前連絡はありません)。 



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