生命の営みの“おすそわけ”、
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長く厳しい冬が終わりを告げる頃、カナダ・ケベック州に広がる広大なカエデの森で年に一度の春の恵み、メープル樹液の収穫が始まります。砂糖カエデ(sugarmaple)の原生林で1本の樹から採取できる樹液の量は約40リットル。糖分わずか1.5%〜2%に過ぎないその樹液を丁寧に40分の1に煮詰めるとメープルシロップができあがります。採取時期は昼夜の寒暖差が激しい早春の数週間だけに限られ、毎年の気候により樹液が流れ出す時期、終わる時期もまちまちです。また樹液を採取するカエデは樹齢40年以上、幹の太さが26cm 以上に限られるなど、樹を傷つけないよう原生林保護の観点からさまざまな規制があります。雪解けを合図にカエデの樹々は長い眠りから覚め、大地からたっぷり吸い上げた澄んだ水とミネラル成分、冬の間に蓄えた糖分が樹液となって溢れ出します。
■森と人との共存
![]() カエデの樹液を収穫 |
原住民であるイロコイ族やイヌイットにより発見されたメープル樹液は、ヨーロッパからの入植者に伝えられ、マイナス30℃にもなる厳寒の大地を生き抜く栄養源になりました。毎年かならず恵みを与えてくれるカエデの森が、人々の生活の大きな部分を占めていることは昔も今も変わりありません。「7世代先を考えよ」という原住民の掟にあるように、長く次世代へ健康な森を引き継いでいくことを大切に考えています。砂糖カエデの森は樹液という恵みをもたらすために、木材として伐採されることがなく、多様な渡り鳥たちの繁殖地としても大切な役割を果たしています。メープルシロップを食べることは、カナダの砂糖カエデの森を生かし存続させることにつながっているのです。
■バスコム社のメープルシロップについて
![]() ドリルで穴を開けます |
集荷したすべてのメープルシロップは、1853年の創業から7代目のバスコムファミリーが自らグレーディング(シロップの味・香り・色でグレード分けをすること)を行い、衛生管理の行き届いた最先端の清潔な工場で加熱処理後、出荷まで低温の巨大冷蔵サイロに保管します。実はこのステンレスサイロが、年に一度しか生産されないシロップを出荷まで最高の状態に保つためには必要なのですが、これを保持する工場はほとんどありません。私たちのシロップが品質が高く非常にフレッシュな味わいなのは、ここにも理由があります。ただバスコムさんたちは、自社のことだけでなく、樹液採取用器具や設備も取り扱い、新規生産農家や小規模製造者の相談役となるなど、業界全体を底上げする活動にも熱心に取り組んでいます。
(メープルファームズジャパン 好本千香子)
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