芦浜産直(三重県大紀町錦) 美味しい花かつおを通して |
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よつ葉の職員研修で芦浜産直と、
花かつおの生産者・濱甚水産を訪問しました
よつ葉の定番商品の一つ芦浜産直の『花かつお』は、まさに芦浜原発反対運動の中から生まれました。
中部電力が三重県南部での原発建設計画を発表したとき、当初候補地は芦浜(現在の大紀町錦)だけでなく、城ノ浜(紀北町東長島)、大白(紀北町白浦)の3カ所ありました。最後まで候補地として残ったのが芦浜ですが、当然、各地で反対運動がありました。
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![]() 阪口和郎さん |
錦の漁師だった阪口和郎さんたちが、原発に頼らない町づくりをめざして、よつ葉などの都市の消費者グループと産直活動を始めたのは1985年のこと。その活動の一つとして、地元の鰹節を都会の消費者に届けたいと考え、協力してくれる生産者を探していました。そんな折、地元新聞に原発候補地の大白地区の近くで鰹節を製造している濱甚水産の濱田英郎さんのことが「自然を守る人」として紹介されていました。
この記事を見て、阪口さんはこの人なら原発反対の思いを理解してくれるのではないかと会いに行きました。すると濱田さんは、阪口さんの話に理解・共感し、そういうことなら協力しようと応じてくれたのです。そこから鰹節を削る機械や技術も教えてもらって、濱甚水産の鰹節を芦浜産直が花かつおに削って袋詰め、削りたてをよつ葉の会員に届けることが実現しました。
![]() 濱田英郎さん |
濱甚水産は、代表の英郎さんで6代目。紀伊半島にもかつては20〜30軒の鰹節製造工場があったそうですが、今では数軒になってしまいました。濱甚水産では鰹節の他、サバやムロアジ、ソウダガツオ、イワシなどから節を作っていますが、冷凍原料ではなく、生(鮮魚)から製造することにできるだけこだわっています。そのためには地元の漁港を中心に、紀伊半島各地の漁港、時にはより遠いところからも鮮魚を送ってもらいます。鮮魚は入って来ればすぐに加工しなければならないので、時には夜中も加工作業が続くこともあるそうです。鰹で入荷から仕上がりまでに約半月、その間、もうもうたる煙と熱気の中での作業です。
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こうして昔ながらの製法で、時間と手間とをかけてできあがった鰹節を食べやすく使いやすい花かつおに仕上げるのが、芦浜産直の仕事。一見、「鰹節を削るだけだから簡単」と思いがちですが、昔ながらの機械を使って削る作業は、かんな刃の調整も含めて微妙な調整が必要。「できるだけ削りたてを届けたいので出荷当日に削る花かつおは、かなり神経を使ってます」と、阪口明志さん。
食べてもだしにしても美味しい花かつおを通して、濱甚水産と芦浜産直の思いと手間暇を感じてもらえると嬉しいと和郎さんは言います。
( ひこばえ 福井 浩)
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芦浜産直 花かつお 注文があった分だけ、 削ります。 |
(三重県度会郡)
芦浜産直は山と海に囲まれた自然の中にあります。早朝から船のエンジン音が響き渡り、市場から魚を入れる水槽を準備する音が、忙しそうにガタン、ドンと聞こえてくると、今日は漁があるのかなと期待をしながら、工場に行く前に市場を見に行くのが日課になっています。
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熊野灘で獲れた魚を使って芦浜産直の干物を作りますが、製造方法には自分たちにしかできないこだわりをもっています。一枚一枚、丁寧に手開きをし、昔ながらの無添加で天日干し仕上げをすることです。魚を天日干しにすると、タンパク質の一部がアミノ酸に分解されて美味しくなります。そして海からの潮風と自然豊かできれいな空気もプラスされて、より一層美味しくなります。
自然が作り出す旨みは、都会ではできないと思っています。季節や魚の種類、塩干、みりん干、それぞれ干す時間が全然違います。毎日、魚を干す時間が近くなってくると、空を見たり風の吹き具合を確認したりして、タイミングを見計らいながらの作業です。
特に夏場は太陽の日差しが強いので難しく、干している時間が長くなると魚が太陽の熱で煮えてしまうので、何度も乾き具合を見に干し場に足を運びチェックしています。
春・秋・冬は魚にとって最高の天日干しになりますので、乾き過ぎにならないことに気を付けています。
魚を干す仕事を任されて4、5年経ちますが、毎日が勉強です。天気次第でお昼もゆっくり食べていられなかったり、雨が降りだすと魚を濡らさないよう大慌てだったりと、自然の中で悪戦苦闘の日もありますが、いつまでもこの芦浜の天日干しだからこそできる、おいしい干物を皆様にお届けできるよう頑張ります。これからもよろしくお願いします。
(芦浜産直 阪口 明志)
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