・主張・生産者の思いを伝えていくカタログに
2009年は、一定の予測はしていましたが、春以降の売上が対前年比で約95%、更に秋以降は約90%と前年実績を割り込む厳しい状況が続きました。私たちの力不足もあって、生産者の皆さまにとってたいへん厳しい1年になったのではないかと思います。
残念ながら2010年も、売上高だけを取り出せば、厳しい状況が続くことは覚悟しなければならないと思います。しかし、その中身こそが問題だと考えています。私たちは、この数年、大豆くらぶの味噌や醤油、世羅協同農場で収穫したトマトのホール缶や小麦粉、麦茶などの農産加工品、あるいは能勢で回収した稲ワラを始め、全て国産の飼料で育てた「地場牛」など、他にはない、よつ葉ならではの商品を開発してきました。これらの経験から、私たちが一から育て、開発してきた商品は、もちろん様々な困難や問題点はありますが、キチンと主張し、丁寧に説明すれば、必ず会員・消費者からの支持は得られると実感しています。
その意味で、よつ葉としての主張を明確にし、生産者の声や息づかいが伝わる商品構成と紙面作りが大切です。ライフ紙面を通じて、農や伝統的な生活・文化、手作りや簡素でシンプルな暮らしを大切にすることを伝えていきます。食べ物を中心にしつつ、日用品、生活雑貨まで含めて、トータルに生活を提案していける紙面作りをめざします。
同時に、こうした厳しい状況だからこそ、生産者、消費者、そして私たちが結びあって支え合う関係を、新たに作り、或いは更に強めていくチャンスだということを、改めて強調しておきたいと思います。生産者との関係、会員・消費者との関係の双方において、厳しい状況だからこそ、互いの立場を認め合い、一からの協同を積み重ねることで、互いの信頼関係を強めていきたいと思います。(ひこばえ・福井浩)
・生産と消費をつなぐ仕事と任じて
農村部を中心に配達している近江産直センターの地域では交通渋滞やマンションの配達があまりありません。配達中は時間との戦いでもありますが、時間も人もゆっくりしていてついつい会員さんとの長話に花が咲きます。
近年では会員さんの出入りも少なく職員も定着している分、配送員や販売員、よつ葉さんというよりは固有名詞で「○○さん」と呼ばれるお付き合いが増えています。売る人、買う人というのっぺりした関係ではなくお互いに生活する者としての多角的な顔のつながり。また、多くの活動や働きかけ、生産現場に触れようとする試みから聞こえてくる雑音を会員さんや地域に感じ取ってもらえたと実感しています。
昨年は会員数、売上げ共に伸び悩みましたが、その分じっくりと会員さんとのつながりを強くすることに力を注ぐことができました。
長期的には人も事業も如何にして日々新たに進化し熟練してゆく産直センター作りに励めるかという事が課題ですが、先を見据えながらも2010年は広報力の強化を計ります。
知識のある人や指導者がカッコいいことを言って器用にこなすのではなく、現場での日々湧き上がってくる疑問や不都合、うまくゆかないことの中から学び取り、不器用でもいいから自分達の言葉で伝える努力をする。配達や事務仕事の一面だけをこなすのではなく、畑を耕したり、料理をしたり、人と会ったりたくさんのことを会員と行動する。
まだまだ力不足だからこそ、多くの人に働きかけ投げかけて分かってくる事や後々返ってくるものもあると考えています。
生産と消費をつなぐという終わらない課題とどう向き合い行動するのか、消費者との接点にいる流通を担う産直センターの職員、事務員、代表者は多かれ少なかれ日々この問いかけを実践と経験の積み重ねの中で手探りしています。
その中から特有の文化や新たな食、暮らしのあり方を多くの人と共に強かに模索してゆきます。(近江産直・井上陽志)
・社会的課題ときちんと向き合った生産現場づくりを
能勢農場が設立されたのが1976年。世の中には物があふれ、多くを所有することが豊かさとされていた時代に、物ではなく人にこだわり「人間解放の拠点つくり」を事業の柱とし、時代の流れに逆らうように産声をあげました。
あれから30年、時代は私たちの想いとは全く逆の方向へ、しかもその度は年々増すばかりです。そして昨年、米国発の金融不況が、世界に拡がった100年に1度といわれている金融恐慌が人々に個人主義と自己責任を押し付け、分担や貧困・格差社会を生む。資本主義・市場経済など、所詮は人より金、協同より個人を優先する社会だということがますます浮き彫りになってきています。
食をめぐる問題も同様です。市場原理・経済効率優先という仕組みの中で大量に生産し消費することが、生産・流通・消費の関係を分断し、それぞれの立場が見えなくなっている。消費者の「安全で安くて美味しい食べもの」という素朴な要求を、流通側が安全をかくれみのに、ひたすら利潤を追い求めた結果、その矛盾が生産に押し付けられ、「少しぐらい」という気持ちの積み重ねが、今の歪んだ生産現場を作り出してきたと感じている。
よつ葉もこうした時代の流れの中で、「自分たちの食べものは、自分たちで作る」ということを基本姿勢に多くの生産現場を協同の力で生み出してきた。そして昨今は、単に国産の原材料で食べものを作るということに止まらず、「どこで誰が生産した原材料なのか」がわかる、いわば顔の見える生産と加工の新たな関係づくりに取り組みはじめている。
しかし、聞こえはよいが実際は、価格や量的確保の問題に加え、天候に左右されるという自分たちの都合では決して進まない課題が山積みしている。でもこうした取り組みを通して、流通・消費の立場をも巻き込みながら、今の社会の仕組みの中での食べもののあり様を一緒に考え・共有することで、もう一度、生産・流通・消費の関係を足元から作り直す力としていきたい。
能勢農場も畜産という現場に責任を持つ立場として、畜産が抱える新たな課題(自給飼料・仔牛からの一貫肥育・よつ葉の養豚)に、具体的に取り組む年にしていきたいと思う。(能勢農場 寺本陽一郎)
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