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2009年9月号(NO.9)
よつ葉は何故「地場」にこだわるのか?
農に触れる機会づくりは私たちの重要な活動のひとつ
農業は生き方として最高 そう考える若い人が増えてほしい
/魚食文化が再び力を取り戻すことを願って
大地と共に心を耕そう
/育てられた海、村が好き
「食糧基地」として活力ある地域づくりをめざして
/伝統的な製品づくりにこだわって四〇年
マチからムラへの橋渡しを担う拠点として
/仲間と共に困難を乗りこえ天草でガンバッています
これからもずっと"正直な"農業をやっていきたい
/農の課題が実践のなかでどんどんふくらみます
美味しい有明海の海苔を届けたい
/生命の食に輝きを取り戻そう
豊かな地域社会が今にある
―それを壊して恥じない、このくにの政治≠フ貧しさを想う
「政権交代」で農政は本当に変わる?
伝えたいこと、変えたいこと
/編集後記/2010年春の交流会について、皆様のご意見を。



よつ葉は何故「地場」にこだわるのか?
地域に広がる可能性を中心に
(株)よつば農産 津田 道夫


▲過剰時は箱からはみ出しそうな野菜セットの箱詰め

 契約する農家と流通・販売側が農産物の作付前に話し合いを持って、販売可能と推測される品目・量・価格を取り決め、収穫された農作物を全量引き取るという仕組みは、これまで全国各地で多様なカタチをもって行なわれてきたように思います。有機農業を志す農家を支えた仕組みもその一つであるし、流通の側が市場を介さずに農作物を仕入れるやり方の一つでもありました。摂丹百姓つなぎの会の生産農家から出荷される地場野菜を、よつば農産が全量引受けるというよつ葉の地場野菜≠フ取組みは、他の取組みとどこが異なっているのか。その特色は意図されたものなのか、それとも不備・不完全さの結果なのか。その把え方について少し考えてみることにしたいと思います。
 まず、大きな違いは、こうした一種の契約関係の下で農作物を生産する農家は本来確定されていることが前提となるはずだという点でしょう。しかし、よつば農産に出荷する農家は三〇〇〜四〇〇戸というように、厳密には確定しきれていないのです。何故そうなっているのかを考えてみると、つなぎの会を構成する大阪府二地区・京都府二地区あわせて四地区の出荷農家の集りを、それぞれの地域全体の中に在る農家の集まりとして把え、少しでも地域に広がっていくようにしたいというよつば農産の考え方が、そうした農家のくくり方にあらわれているのだと思っています。
 流通・販売組織と結んだ契約農家や農家グループが、その農家の存在している地域の中で、どんな関係を作っているのか。この点は、農家を単なる経済活動の主体としてのみ把えると、たいしたことではないのかもしれませんが、地域農業の活性化、農村の活性化という側面から見れば、非常に重要なことだと私たちは考えています。売り先の確保が、他の農家のその売り先からの排除を必然化し、結果、地域での孤立や対立を引き起こしてきた例を私たちは幾つも見てきました。
 二つ目は、販売予測に合わせて農作物の作付量を調整しても、収穫量が増えて出荷量が過剰になってしまった時の対応についてです。農家からみれば豊作はうれしい結果です。いくら人が努力しても、人の力をこえた自然によって動かされざるを得ない農家にとって、収穫量が予測をこえることは何よりも喜ばしいことなのです。けれど、流通・販売の側でそれは過剰≠ニして嫌われてしまいます。そんな時、市場流通では価格を引き下げ圃場廃棄を強制し、わずかな補償金と引き換えに農家に負担を押しつけます。流通側の受け皿を大きくすることは短期間ではむつかしいこともあって、契約・提携関係を結んだ取引でも、多くの場合農家側に出荷の自粛、制限を要請し、実質的に農家側に負担をしてもらうことになっているようです。つまり、一言で言うならば、買う側が強いということです。

よつ葉全体で引き受ける覚悟を


▲野菜(キュウリ)を前に作り手と受け手の
目を揃える目揃え会

▲目揃え会で作り手側から荷姿について意見交換

 よつ葉の地場野菜の過剰は、最初に触れたように、対象農家を地域でゆるやかにくくっている為に、豊作ともなれば出荷量の増加が一段と顕著になります。その状況に対応する為に、よつ葉は豊作の結果をできる限り農家側にシワ寄せしなくて済む方策をいくつか作り出してきました。(1)野菜セット≠ノよる販売を中心に位置付けて、同じ価格でも、出荷量に応じてセットの内容量を変化させ、過剰な時にはよつ葉の会員のみなさんにたくさん食べてもらおうという仕組み。(2)「野菜大好き会員」システムをつくって、あらかじめ登録してもらった会員に過剰な地場野菜を引受けてもらう仕組み。(3)各地域の配送センターに依頼して過剰な野菜を配送時に引き売りしてもらう仕組み。
 もちろん、これらの仕組みを駆使して届けられる地場野菜の売価は、農家からの買取価格より安くなる場合が多いことは言うまでもありません。したがってこれらの仕組みが継続されていく基礎のところには、「流通・販売側がその負担を引受ける」というよつ葉全体の覚悟≠ェあるように思います。市場経済では、至極あたり前の売り手と買い手の非対称性を、あたり前で済まさないで、疑い、抵抗し、考えつづけていきたいと主張してきたよつ葉の立場を示していると思っています。
 「えらそうなことを言うても、地場のエエカゲンな農家を甘やかしているだけとちがうんかい」、全国各地で必死に農の現場を支えている農家から、厳しい声が聞こえてくるのが眼に浮かびます。日々、押し寄せてくる地場野菜の検品作業に追われているよつば農産の職員からも疑問の矢が飛んできます。日々の配送業務で会員さんとの対応に忙しい各地の配送センターでも、「また引き売りさせるのか!」と「非難」の声が渦巻いているようです。そして、よつば農産の経理担当者は、この時期、身も細る日々を過ごしているわけです。
 地場の生産農家にそうしたよつ葉の覚悟がどの程度届いているのか…。よつ葉の会員の皆さんにその考え方がどの程度理解してもらえているのか…。不十分さは至る所で目につきますが、こうしたよつ葉の地場野菜の取組みが、食を通して農≠竍社会≠変えていこうとしているよつ葉の活動の中心に位置付けられるものであることは間違いないと思っています。そして、つなぎの会四地区に若い新規就農者が増え始めて、それぞれの地域が活性化に動きつつあるこれからが、いよいよ、よつ葉の地場野菜の取組みも次への飛躍を求められているのだと感じています。