飼料改良の道のりは長い…
~春日牧場より~
能勢農場はこれまで別院食品のオカラを中心とする食物残渣を自家配合したエサと、農場独自の内容を指定したペレット状の配合飼料、秋に回収している稲わら及び業者から仕入れた乾草(麦わら、クレイン)で、牛を育ててきました。
しかし、与えたエサの総量に対して牛の成長が振るわず、エサの形状・牛の種の問題ほか様々な分析を行った末に、これらエサの内容を大きく見直す方向へ舵を切ることとしました。
自家配合飼料の主成分であるオカラは、別院食品の豆腐の残渣を、水分を調節するためのビール粕や麦のふすまといった残渣と一緒に混ぜます。分けてもらっているオカラの水分率が約90%と高いので、それを60%程度に調整するため大量の副材を必要としていました。水分が多いと、本来なら吸収して肉となるべき栄養を便として流し出てしまうのです。
せっかくもらっているのにこれではもったいないと、何とか無駄にしないように工夫を凝らしています。別院食品とも相談した結果、先方で水分を減らせる設備が導入されることとなりました。実現されれば、これまでに増えていた副材の量を抑える事に伴うコスト削減と、混ぜる過程での機械への負担や、使い切れない分を堆肥に混ぜるといった手間などを減らせると思います。
もうひとつの配合飼料、これも今までのペレット状より吸収しやすいマッシュ(粉状)へ切り替え、与える量も増やしています。そして春日の肥育では、配合飼料の増量に耐えうる胃の活性化に最適な粗飼料として、稲わら一本に絞りました。13ヶ月まではビタミンの加減でクレインを与えています。
これらをできるだけ長い時間をかけてゆっくり吸収してもらうように反すうさせるには、牛がリラックスして座っている時間を増やす必要があります。このため、牛の床の掃除を間隔を開けずに行うようにしました。出てくる堆肥の水分が少ない状態なので、軽く、量も少なく、発酵も早くなるという好循環が見込まれます。これをもって、これまで堆肥の活用をお願いしてきた近隣農家のみんなにも、状態の良い堆肥を提供できるよう頑張っていきます。
春日牧場のある丹波市古河は田畑がたくさんあるにも関わらず、能勢ほどもらい手が多くはありませんでした。それでも声掛けを続けてきたこともあってか、ここ何年かで使ってくれる方も増え、知名度としてはまだまだではありますが、この地域の農業振興に協力していくことができればと思います。
こうして改善を進めていくなかで、様々な課題も見えてくるようになりました。牛の増体を成すにも、堆肥を提供するにも、それに携わる人間が周りとの関係をなしにしては結果を出せないというのが分かってきたのです。問題点や状態の不備、ちょっとした気付きを抱え込むと一人で解決するのは難しく、ロクな結果になりませんでした。
日々の改善ももちろんですが、これらもまだまだ時間をかけて長い道のりとして取り組んでいく必要がありそうです。
(能勢農場 春日牧場・道下慎一)
