〈2016年 第108便 -1(2016.12.5)〉
一歩下がって二歩前進 〜混沌から新たなものを創造する力を〜
今年の11月で、瀬戸田農場が25年の事業活動に終止符を打ち、閉場しました。瀬戸田農場がある生口島は芸予諸島の中の一つで、柑橘生産と造船業以外は目立った基幹産業はなく、農場設立当時は、しまなみ海道が開通していなかったので、船だけが島への唯一の交通手段でした。そんな牧歌的な島に船で上陸し、農場建設を始めたのだから、当時の島の人たちは、驚愕の思いで見ていたと思います。
それから25年、柑橘の生産者との関係を少しずつ広げ、堆肥利用を呼びかけ、自らも柑橘の生産に従事し、みかんの搾り粕を飼料として利用するなど、地域の産業に寄り添い、柑橘の生産地とともに歩んできました。しかし、25年という月日の中で、島の高齢化に伴い、柑橘生産は徐々に衰退し、加えて2000年のBSE発生以降の畜産業界の変貌など、社会情勢が今後大きく変化していこうとする中、どのように対応してゆくべきかを話し合い、瀬戸田農場と能勢農場が事業統合することを決定しました。
一方、瀬戸田農場の事業を引き継ぐことになった能勢農場は、丹波市にある春日牧場に牛を集約。6年前、仔牛2頭からスタートした春日牧場は、酪農や稲作農家との関係を徐々に広げ、2年前には広島から世羅協同農場が春日に入植。結果として今回の事業統合に伴う牛の増頭が、この間広がってきた農業生産との関係に見合う、適正な規模となり、春日牧場は、肥育牛220頭を手がけるまでになりました。これで、能勢農場の総頭数が400頭以上になりましたが、今の全国の畜産規模からすると、「中の下」といったところでしょうか。一昔前ならよくある規模でしたが、今や3000頭、5000頭が主流です。でも、誰も彼も規模拡大で儲けようとしたわけではありません。
2000年に入り、BSE、口蹄疫、自然災害(地震・大雨)と、畜産を営む者にとっては、混迷の時代が続いています。そして、大きな情勢の変化に、その都度、「行くかやめるか」の選択を迫られてきました。でも、そうやって規模拡大をしたとしても、いずれ競争と淘汰という連鎖の波に呑み込まれ、多くの畜産農家が消えてしまいました。そして国は、生き残った農家だけに手厚く補助をする。
しかし、本来あるべき政治とは、困窮し、混迷する現場にこそ手を差し伸べるべきであって、今のような経済成長のみの産業にしか目が向いていない政治には、大いに問題がある。だから、自力で未来を展望する力が必要だと思います。「一歩下がって二歩前進」。昨年からスタートした放牧・繁殖の事業も、瀬戸田農場との事業統合も、そんな想いで取り組み始めました。混沌とした時代に、将来こうした事業が通用するかどうかは、いまはわかりません。でも展望をもち、混沌から新たなものを創造する力が、いま、求められているのではないでしょうか。
(能勢農場 寺本 陽一郎)

左から、さつき、みはる、一歩
ここから始まる第一歩
「牛は食べるだけの生きものではない」。放牧・繁殖事業の試験的な取り組みが始まって約2年、私の牛に対する想いは変わりました。
昔、農耕用として牛を飼っていた時代、家畜と人は近く、牛は役用牛として日々の生活の中で役割をもち、家族の一員であり、共に過ごし、お肉としていただくのは最期でした。
今、人々の生活環境は変わり、見渡す山々は荒廃し、耕作放棄地も増えてきています。どちらも人間だけの手では追いつけない生産スピードや生産効率を求められるようになったことが原因だと思います。
今こそ、牛の力を借りたらいい。牛は草食動物。本来、草だけで大きくなれる動物。一番手間のかかる下草の管理、草刈りを牛にやってもらうのです。今の時代にも牛に役割をもたせることができないか。食べるだけが目的の牛ではない、そんな牛がいてもいいのではないか。そんな想いで放牧に取り組んでいます。
また放牧だけでなく、繁殖にも取り組んでいます。その中で感じたことは、ただ一つ。牛だって人間と同じ。生きものは全て同じ。命を宿すことの奇跡と、かけがえのない命の大切さ。そうやって誕生した命を育てて、お肉にしている。そして、私たちはその命をいただいている。
大きく・いいお肉になるためにどうしたらいいのか。エサをたくさん食べてもらうには。こんなことを考えていたときに「肥育ってなんなのだろう」と思った自分がいました。すごく空しく、淋しい気持ち。牛ってそれだけなの? いや、違う。そんな矛盾の中でも、せめて牛が生きている時間を大切にしたい。そういう想いで畜産に向き合っていきたい、と思うようになりました。
そして9月20日。能勢農場に新しい命が誕生しました。元気な男の仔。名前は「一歩」。この事業の試験的な取り組みを通じて、畜産の新しい未来を切り開いていきたいと思います。ここから始まる第一歩。みなさんと一緒に歩んでいきたいです。
(能勢農場 古市 木の実)

運動会だよ全員集合!10/16 商工組合運動会@万博公園小運動
今年も運動会の季節がやって来ました。今年は天候も良くて、暑くも寒くもなく、ちょうどいい運動会日和でした。
今年初めて、実行委員をやらしてもらいました。当日は、テントなどを積んだ搬入車の到着が遅れたものの、実行委員ほか産直のみんなの協力で、準備は思った以上に早く整いました。
競技の方は、まず「綱引き」では各組盛り上がっていましたが、平等な組分けは行えませんでした。
次に、今年初めて行った「宅急便リレー」は、第1走者が1個の箱を持ってスタートし、アンカーは5個の箱を持って走るという競技です。各チームとも、無難にこなしていました。
「ムカデ競走」は、チームワークの差が出た競技だったと思います。
「タイヤころがしリレー」では、タイヤがバトン代わりの競技でした。
「心はひとつ大縄跳び」の競技進行をおこないましたが、競技の説明不足だったせいか、競技の流れが途中で止まるハプニングがありました。
最後に、「真剣リレーMAX」では、みんな足の速い方々がそろっていて、盛り上がりました。今年も、ケガや事故もなく、無事に終えることができて、よかったと思いました。
(ハム工場 梅原 弘)
「真剣リレー」に参加した食肉センターの若者達4人の実感のこもった真に迫る報告です。
今年の真剣リレーは、応援側でゆっくり観戦するつもりでしたが、白組団長から「リレーに出てほしい」と頼まれ、あまり乗り気ではなかったけど、出ることにしました。食肉メンバー4人で走ることに!
第1走者が僕です。スタート地点で準備してると、横には小学校の女の子が! すごく走りづらい。ですがこれは真剣リレーなので、走りだしたのですが、最初から足が絡まり、転けそうに。気持ちだけは走ってる、でも体がついてこない…。情けない運動不足です。ごめん佐田君! あとは頼んだー。
(中尾 清二)
第2走を走るのは、能勢食肉センター2年目の佐田章平です。
僕はまだ19歳で、「若いから余裕で走れる」と自信がありました。でも、自分で思っているよりか全然体がついてこなくて、ビックリしました。
僕にバトンが回ってきたのが3番目か4番目ぐらい。前の人に追いつこうとしたのですが、グラウンドは思った以上に滑りやすくて、何とか走っていたんですけど、次の人にバトンを渡すときに自分の足がもつれて、ズッコケてしまいました。その結果、べったこで次の人にバトンを渡したのですが、とても恥ずかしかったです。
(佐田 章平)
運動会の真剣リレーの3走者目を走った井上高嘉です。
中尾さんから2走者目の佐田君へバトンが渡り、佐田君が最終コーナーを過ぎた時、自分は前に向いて右手を後ろに出して、少しリードをしてました。
だんだんと近づいてる気はしてたんですけど、突如声が聞こえ、後ろをふり見たら佐田君の姿がなく、こけてました。すぐさまバトンを拾い走り出し、少しでも前の走者に追いつこうと走りました。少しは近づいてアンカーの佑磨にバトンを渡しました。
(井上 高壽)
最後にアンカーを走りました、井上佑磨です。リレーを走る前、「もし○○さんが自分より前を走っていたら、頑張って追い抜こう!」と小さな目標をたて挑みました!
かなり差のついた最下位の状態で、井上さんからのバトンをサイドステップの助走で受けとって走り、2人を抜き、ゴール! 結果は2位になりました。小さな目標も達成でき、チームにも貢献できたかな?と思います!
実行委員の方々ありがとうございました。運動会楽しかったです!
(井上 佑磨)

白組の第1走者としてスタートする中尾(右から2人目)
移籍1年を経て(ハム工場 上西 達也)
早いもので、ハム工場に移籍して1年が経ちました。当初、商品になるまでの加工過程に予想以上に時間がかかることと、手作業の多さに戸惑いを感じていましたが、今では食べ物作りに携わる使命感と充実感をもって、日々作業しています。
食肉センターで身につけた技術や仕事の段取りのつけ方は、ありがたいことに役立っています。ハム工場で身についたことといえば、食品衛生管理の考え方が変わったことです。整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の「5S」と呼ばれるもので、清掃の中に洗浄・殺菌を加えた「7S」も近年提唱されています。それを現場の中で実践し、これからもより質の高い商品作りを心掛けていきたいと思います。
新エリアで会員拡大
10月22日(土)に、第22期定時株主総会を行いました。
一昨年度、能勢町に倉庫の改築、移動販売車の購入、新エリアで使用する車両の入れ替えなど大きな先行投資を行ない、その減価償却費に売上げがまだ追いついていない現状に、株主から鋭い指摘をいただきました。
前期の総会時に、新産直設立案(近畿北部地域での新しい会員拡大)を議案書に載せましたが、この設立案に日吉産直と共に、協力して取り組んでいくことが総会で承認されました。これにより、福知山市、綾部市、舞鶴市、宮津市、京丹後市で拡大営業を行うことが可能となり、新産直設立構想に向かって大きく前進していくものだ、と感じました。また、今後の拠点探しや配送エリアの整理などは、日吉産直との合同役員会で徐々に進めていくこととなりました。
今期から新役員として、能勢産直に関わることになり、これまで以上に社内、社外を問わず、全体的に物事を見ていけるように日々精進していきたいと感じています。
最後に、今期は職員一人ひとりが今の能勢産直の現状に危機感を持ち、会員数、売上げ共に拡大していけるように、目標を持って考えて行動していく一年にしたいです。
(能勢産直センター 吉田 幸司)
【北摂協同農場から】農家の顔が見える交流会
「安全・安心」「農家の顔が見える」という言葉はライフでもよく目にします。でも、農家が「どんな人が自分の育てた野菜を食べて、どう感じているのか」を知る機会、そして会員さんが「どんな人がどんな畑で野菜を育てているのか」を知る機会、そのどちらもあまりないのではないでしょうか?
そこで、北摂協同農場はよつば農産と一緒に、地場では初めての産地交流を企画しました。農家と会員さんが実際に顔を合わせて交流していただくことにより、野菜を育てている時、食べている時、お互いに思いを馳せていただければ、この交流会は大成功です。
交流会当日、10月15日はさわやかな秋晴れ。6名の会員さんが参加してくれました。出荷場の説明に始まり、地元の農家の畑にて落花生・ミニトマトの収穫、北摂直営圃場のキャベツ畑見学(アオムシとヨトウムシのパラダイス…あえて見ていただきました)、白ネギの収穫、お昼は能勢牛・能勢野菜で地元農家の皆さん・会員さん・よつ葉スタッフ総勢30名で交流バーベキュー。
食後は、能勢農場の説明、放牧場・赤牛の赤ちゃんとご対面、食肉センターの脱骨作業の見学、最後にサツマイモの収穫。日帰り5時間の行程でちょっと欲張り過ぎました!
会員さんからの感想を抜粋させていただきます。
* * *
種まきから始まり、収穫までの苦労があり私達の台所に届くわけですから、感謝の気持ちは忘れてはいけません。生産者さんの顔を見、話も聞けたので、よりその気持ちを強く受け止めることができました。
(淀川 Sさん)
今年は天候不順で大変だった…と生の声を聴いて、配達していただいたお野菜を今まで以上に、きちんと食べよう!!少々の傷や変形した物でも、食べようよ!!と思うことしかり。
(池田 中山 真由美さん)
生産者さんのご苦労話や少し笑える話などを身近に聞くことができ、和気あいあいとした時間を過ごしました。お話の中で「(生産者と消費者は)持ちつ持たれつの関係でいなければならない」という言葉を聞いた瞬間、心に刺さる思いがしました。
(西京都 田中 美保さん)
お野菜はもちろん、「+α」心にも収穫です。農業を生業にされている畑に足を踏み入れてみたかったんです。初潜入です♪ その時の私の気持ちは、ユーリィ・ガガーリンと同じだったんじゃないでしょうか。
(淀川 近藤 直美さん)
今までよつ葉さんの野菜だったものが、あの時お話した皆さんの野菜になりました。帰宅してから、見せていただいたものや、体験させていただいたことを家族に説明すると、ずいぶんうらやましがられました。こんなんやったあんなんやった、と思い出すだけでしばらく楽しめそうです。
(阪神 平尾 靖子さん)
* * *
最後に、この企画を一緒に考えてくれた、よつば農産・秋山さんの感想です。
「お腹も胸もいっぱいになりました。たくさんのお土産ができました」という会員さんの言葉が印象的で、地場野菜を通して農家と会員さんが産地交流で出会い、新たな関係も生まれ、こういったつながりの輪が広がっていき、たくさんの人に地場野菜を食べてもらえればと思います。
(北摂協同農場 山崎 聡子)

【能勢農場から】産直と創る交流会
交流会の前に産直ともっと交流がしたい!これまでの交流会のように一方通行なものではなく、産直と一緒に一から考えて創っていきたい。会員さんに何を伝え、感じてもらいたいのか。会員さんはどんなことに興味や関心をもっている?それは、一方通行ではできないこと。産直とよつ葉の生産現場の関係だからこそ創れる新しい交流会を始めました。
能勢産直・川西産直
「能勢農場をもっと身近に」を目的に、シバ定植に続く第2弾として能勢産直と川西産直との合同企画でバーベキューをしました。多くの参加があり、大変にぎやかでした。
参加していただいた会員さんの中には、僕の配達コースの会員さんや、以前にうかがったことのある方もおられました。ゆったりとした時間の中で、産直スタッフや農場のスタッフも交えて、食べ物のことだけではなく、原発について周りの人と話す機会はないといった話や、お互いの子どものことなど、普段とは違う話をする良い機会になりました。
バーベキューだけではなく、全員で「こどもどうぶつえん」へ行き、哺育している仔牛や動物と触れあったり、放牧して育てていて出産間近でお腹が大きく張っている“あか牛”を見学に行って集合写真を撮ったりしました(仔牛は無事に産まれました)。
能勢農場では夏の祭りや保養キャンプ、シバ植えや餅つきの他にも今回のバーベキューなど、いろんなきっかけやタイミングで人が訪れますが、日常とは違う時間の中で、みんなが心を解放出来る場所になっているんだなぁ、と感じた一日でした。
これからも、「気軽に来れる身近な農場」を目指して、いろんな企画をしていこうと思っています。みなさん参加して下さいね。
(川西産直センター 武井 雅和)
地阪神産直・阪和産直
今年6月から、能勢農場・阪神産直・阪和産直合同で「よつ葉を知ろう!─能勢農場編─」と題して、全6回の交流会を企画し実施しています。農場スタッフと産直スタッフが顔を会わせて一緒になって考え、会員さんに“能勢農場をもっと知ってもらおう!”“自分たちの農場と感じて欲しい!!”という想いで企画しています。
会員さんに、能勢農場が取り組んでいる事業「牛の肥育・移動動物園・あかうしの放牧」の様子や、能勢農場の歴史、地域とのつながりなどを実際の作業体験を通して感じてもらったり、バーベキューなどの食事を共にしながら、交流を深めたりしています。
「交流会を運営していく上で、一番大事じゃないか?」と話をしているのが、農場スタッフと産直スタッフの一体感です。農場スタッフが愛情をこめて牛を育てていることや、稲ワラ回収などを通して地域とつながっていることを、私たち産直スタッフは、時には一緒に作業をしたりする中で、自分たちの仲間が取り組んでいることとして理解し、共感したいのです。そのことが会員さんに伝われば、能勢農場はどんなところで、そこで働く人たちはどんな人たちで、そこで育った牛はどんな牛か─ということが、自然と伝わっていくはず!という想いで取り組んでいます。
手探り状態で進めている企画ではありますが、回を重ねるごとに能勢農場の魅力を感じてもらっている!と実感しています。これからどんな交流が生まれるのか、とても楽しみです。
(阪和産直 志智 裕司)
- 前の号へ
- 次の号へ
▲
Copyright © 関西よつ葉連絡会 2005 All Rights Reserved.