〈2016年 第105便-1(2016.4.4)〉
【能勢農場から】新設春日農場 酪農・農業の現場と連携して
昨年の農場だよりで、「春日の哺育現場と能勢の肥育現場が入れ替わって大きく変わります」と書きました。具体的には、生後2週間から1ヶ月の仔牛を導入して11ヶ月までを能勢農場で育て、12ヶ月から27ヶ月で出荷するまでを春日牧場で肥育する、という風に変わりました。
7ヶ月までの月齢の仔牛は、昨年一気に能勢に連れてきましたが、春日には少しずつ増頭していったため、常駐者1人で対応していました。しかし、牛が増えてきたこともあり、1月より常駐者3人の態勢に変更しました。体の大きな牛を飼うため、今までの牛舎では入りきらなくなり、当初は今の場所以外で探しては見たもののなかなか見つからず、牛舎の改造、や隣にあいている牛舎を新たに借り受けて、そこの工事を業者まかせにせず、手助けをしてもらいながら、自分たちで改築しています。
それと同時に、今までと同じように出荷するまでの牛の管理への対処なども進めています。能勢で肥育していた時と違い、牛舎の改造などしながらのため、その都度見直し等をやりながら、日々の仕事をしています。そのためにも、常駐者同士の連携はもちろん、能勢と離れた現場同士の連携も必要でそのことの難しさを痛感していますが、それぞれ努力していきたいと考えています。
昨年11月、TPPが大筋合意され、酪農の現場では乳製品の新たな低関税輸入枠の新設やチーズなどを中心とした関税撤廃が合意され、牛肉は最終的に関税が9%まで引き下げられることになりました。日本の農業にとっては大変な事態が予想され、それに対応するため、小規模から大規模への転換や各地で地域が中心となっての6次産業化、地域ブランドの立ち上げなどが進んでいて、それに対応できないところでは離農や廃業に追い込まれています。全国の仔牛市場では出荷頭数が減り、これまで安値であったホルスタインの雄も高値がついています。出荷牛も和牛を中心として高値で取引はされていますが、少し安くなったとはいえ、エサ代などの肥育コストは高く、農家にとっては厳しい経営状態がさらに加速していく、といわれてます。
能勢農場でもそうした世間の動きから関係がないというわけもなく、これまで、家畜商を通して市場からの仔牛の導入をしてきたのを改め、春日牧場のある丹波市を中心とした丹但酪農の酪農家や長野の酪農家から、「たかどや牧場」を経由して生後2週間の仔牛の導入に切り替えることでコストを抑えるということだけではなく、病気になりやすいなど難しい哺育を農家から教わるなどして進めてきました。それ以外にも、今まで雌牛の肥育のみから去勢牛の肥育も始めていて、今年から本格的な出荷となります。雌牛では昨年平均枝重が450キロと結果を出すことができましたが、去勢牛の増体は今までの餌の中身では難しく、丹但酪農の農家から教わりながらも、今までと同じように残渣物を有効活用して、餌の中身を工夫しています。
このようなことができるのは、市場からの導入だけではなかったからではないか、と思っています。畜産現場の問題を、同じ「牛飼い」という立場から協力・連携する関係を作ってきたことで進められてきたと感じています。
昨年からは放牧・繁殖の事業化に向けた実験もあらたにスタートしています。高知から「土佐あか牛」という牛種を導入し、放牧に適していることから、牧野作りから取り組み始めています。飼料の確保も能勢の稲作農家との連携による稲ワラ回収の事業や牧草回収、北摂協同農場と協同してのデントコーン栽培などをしてきました。オカラを中心とした残渣物や、醗酵フスマを使って牛の枝重平均が上がった実績を元に、残渣物を活用しての飼料給餌をしています。
春日でも、今後の増頭にむけて稲わらの回収や牧草栽培などを本格的に始めていきます。牧草栽培は世羅協同農場ですでに栽培してもらっていますが、稲わら回収は一昨年までやっていましたが、昨年は人手不足が大きな要因で能勢の稲わら回収に集中したため、春日ではやりませんでした。今年は、一昨年並みの回収を考えています。それ以外にも飼料稲の確保も考えています。
今までもこれからもそうだと思いますが、「自分たちの現場だけですべてのことができる」とは考えず、「沢山の人たちにどう協力してもらいながら問題を解決していくのか?」を考え、新たな問題にどう立ち向かっていくのかを、牛を飼うということから考えていくということが大切であり、そのような春日の現場にしてきたいと思っています。そのためにも、春日で増頭して肥育環境を整えていくことが今年一番の課題である、として取り組んでいきます。
(能勢農場 道下 慎一)
【能勢農場から】能勢農場第39期定時株主主総会のご案内
下記の通り、第39期定時株主総会を開催いたします。株主の皆様には、すでにご案内を郵送でお送りいたしましたが、株主ではない「農場だより」読者の皆様も、ぜひご参加いただき、ご意見・ご批判をいただきたく、ご案内申し上げます。
◆日時:4月10日(日)午後2時より
◆場所:能勢農場
※なお、総会終了後、恒例となりました焼き肉パーティーを準備いたしております。お気軽にご家族連れでお越しください。送迎バスは、同日午後1時に、能勢電鉄「日生中央」駅前発となっています。どうぞご利用ください。
【能勢食肉センターだより】大人の責任を感じて・・・
先日、小学生が工場見学に来ました。ハム工場の隣には小学校があります。隣と言っても、大人の足で歩いて5分ほどかかるのですが、隔年で3年生が見学に来ています。作業を見てもらいながら説明をして、質問を受け、試食をしてもらう、といった1時間程度の簡単な内容のもので、十分な対応が出来たかどうかいつも申し訳ないなと思いながら続けてきました。
子どもたちがこうして工場見学に来るのもこれで最後だと思うと、何とも言えない気持ちです
そんな工場見学も、今回が最後になりました。児童、生徒数減少により、能勢町内のすべての小中学校を廃校にして、ひとつにまとめられてしまうからです。小学校6校、中学校2校を一挙に統廃合してしまいます。おそらく全国的に見ても前代未聞の出来事で、行政、教員、保護者そして諸々の関係者は混乱し、出所定かではない良からぬ噂に振り回され、そして何より児童、生徒たちがその混乱を肌で感じ取っているようで、新しい学校に対する期待より、その日が近づくにつれ不安が増している様子です。
町民の声にいっさい耳を貸すことなく立案され、進められたこの統廃合計画に幾ばくかの抵抗を試みた一人として、そんな子どもたちの不安を思うと、反対運動そのものを一本化出来なかったことへのじくじたる思いがつのり、最後の見学を終え校舎へ戻る子どもたちを見送りながら、大人の責任を果たせなかった無力感をあらためて感じてしまいました。全校生徒600名での新学期を迎える、能勢小中学校。児童、生徒の夢や期待にどう応えてくれるのか。
(ハム工場 佐藤 雄一)
よつ葉の交流会に参加して
能勢食肉センターに勤め始めて一年になりました。
3月5日にあった生産者とよつ葉職員の懇親会は、初めて参加させてもらって、とても緊張しました。会場に行くと、ものすごくたくさんの人がいてよつ葉に関係のある人がこんなにもいたなんてびっくりしました。
そして自分の席に着くと、自分とは年が離れている人がたくさんいて、また緊張しました。でもたまたま横の席に座らはった配送センターの人といろいろなことが聞けました。
例えば食肉センターでは、お客さんによって勤務時間が左右されないけれど、配送センターではお客さんから「この時間しか家にいないんです」と言われたら、できるだけその時間に配送するとかも考えて動かないといけないなんて大変だな、と思いました。
次に3月6日に瀬戸山玄さんに講演していただいた[次世代に伝えたい食]というのは、難しい話で僕の知識では、あまり理解できなかったのですが、途中でながしてもらった魚の映像は面白かったです。
今度のよつ葉の交流会では、もっと自分の勤めている能勢食肉センターのことを詳しく話せるようになっていきたいと思います。
(食肉センター 佐田 章平)

子どもたちがこうして工場見学に来るのも
これで最後だと思うと、何とも言えない気持ちです
【瀬戸田農場から】セーフティーフルーツ能勢賢太郎さん
最近、レモンを使った加工食品を目にすることが増えた。地元スーパーはもちろんのこと、土産物店や高速道路のサービスエリアと県内いたる所で見かける。広島県が県内産レモンに力を入れていることもあり、《広島県産レモンを使った○○》《瀬戸田産レモンの△△》などなど。
市場でのひきあいが強くなり、農家にとってはうれしいことで、レモンに改植する農家も増えている。数年毎に人気の品種に改植せざるをえない、という市場に振り回される柑橘農家の宿命というかなんというか。
同じレモンでも、皮ごと食べることができるレモン、無農薬レモンを栽培している農家は数少ない。その数少ない農家の一人に、能勢賢太郎さんがいる。彼は10年近くを関西よつ葉連絡会の滋賀方面で自然食品の配達をしてきて、7年前に柑橘農家を継ぐべく瀬戸田に帰ってきた。30代という島にとって大切な若手農家である。ちょうど僕が農場に来て間もなくの頃で、相談にも乗ってもらい、農場の役員も担ってもらっている。彼のお父さん・敏夫さんは25年前、農場建設に尽力してくれた人で、頼んだらすぐに動いてくれる腰の軽い(口も軽い)イイおっちゃんだったけれど、残念なことに、昨年、この世を去った。
有機栽培にこだわる能勢さんを応援してください!
有機栽培を継いだ彼は、イイおっちゃんの父親とは対照的に、まじめな人。ゆうパックのCMでダウンタウン松本演じる「バカがつくほどまじめ」かどうかはわからないが、ええかげんな僕からは、「イイにいちゃん」である。まだまだ少数派である有機農業にこだわり、奮闘する若い力に島の地域の未来がかかっている。そんな彼に「温州みかんの木には酸度が強くなるから」と農家からは敬遠されてきた牛糞堆肥をさんざん施肥してきた農場のみかん畑の面倒をみてもらうことにした。有機栽培を続けてくれる彼が引き受けてくれることは何よりも畑の土が喜んでいるに違いない。みかんが、賢太郎の味になるのが楽しみです。
(瀬戸田農場 嶋吉 孝保)

レモンの収穫をする能勢賢太郎さん
【北摂協同農場から】こんなに近いんや!福井原発発見ツアー)第二弾開かれる
1月・2月は-2℃~‐5℃の最低気温が続く日々。そんな中、急に3月・4月の気温に匹敵するような温かさが訪れては、また寒くなる。へ~んな天気!!
昨年の春夏作も、異常気象で各地域野菜は不作でした。1月に今期の春夏作の野菜作付予定を出して頂き、地場野菜として出荷している「つなぎの会」の4地区(アグロス、高槻地場農産生産組合、別院協同農場、北摂協同農場)で、会員の皆さんに円滑に野菜の出荷ができるよう調整します。2月の上旬にようやく決定、2016年度春夏の出荷に向けて活動開始となります。がんばるぞーっ!
しかしながら、寒さ厳しく、畑が凍ててしまい、作業が進まない時期に「つなぎの会」主催で『なんでやろう勉強・交流会』を4地域の生産者に呼びかけ、学習会を行いました。5年前福島原発事故がおこり、『こんなに近いんや!福井原発発見ツアー』ということで現地を視察に出かけた勉強会の第二弾となります。つなぎの会の生産者はもちろん、能勢農場やよつ葉ホームデリバリーの配送員の参加もあり、総勢60人程で福島県の現状報告と、私たちの目と鼻の先にある福井の原発を取り巻く現実の話をお聞きし、学習することができました。
福島県から「大地を守る会」などに野菜・果物を出荷されている「福島わかば会」事務局長の佐藤泉さんに、原発事故当時のことから今もって生産、出荷に大きな問題を抱えている状況を分かりやすくお話しいただきました。
もうひと方、福井県の「ふるさとを守る高浜・おおいの会」から、東山幸弘さんに地元の反原発運動がどうして広がらないのか、地域の現状のお話を伺いました。東山さんは、大阪府熊取町の京大原子炉実験所で原子炉の安全性を信じて長年勤務されていました。定年退職後、生まれ故郷の高浜町で農業されています。2011年の原発事故で考えが大きく変わった、ということです。そんな東山さんのお話は専門的な内容ながら解りやすく、興味深く伺いました。
自分たちの資本である田畑が汚染され、あるいは汚染されなくても、風評被害で農産物が売れない状況など、対岸の火事ではないことを思い知りました。
土を入れ替える除染作業も大変ですが、放射能を受けた樹木は除染のため一本、一本、樹皮を剥がしていることを知りました。除染作業、または廃棄物を運ぶ運転手などで人手不足のため、時間給が2500円~3000円に上昇しているそうです。
「福島は、今『震災バブル』と言われています。そこに群がっている人はバブルかもしんないけど、取り残されている農家はすごく大変です」とゆっくり話された佐藤さんの福島弁が、辛くこころに刻まれた勉強会でした。
(北摂協同農場 安原 貴美代)

福島・福井の現状を聞きました
【世羅協同農場から】 2度目の春を迎えて
3月に入り、あちらこちらで水田を耕す光景が見受けられます。兵庫県丹波市春日町の古河地区では、極早生の稲を植えられる方がほとんどです。理由は様々あるみたいですが、地元のJAがその品種の苗しか販売していないことや、田植えと稲刈りを委託されている農家さんが多いことなど。何よりも川水を一度ポンプで高台のため池に揚げて、水路に水を流し一斉に水田に張ります。そのため代掻(しろか)きも皆さんほぼ同時期にされます。
そのため、水番の日役がシーズン中に5回程あります。水が必要な人は、溜め水の放水の前日までに入水口付近に白旗を立て、水番は池から近いところから順番に水を張っていきます。朝7時から夜の7時まで、1回の水張りで全て張り終わるのに3日程要します。
集落出身でない私にとっては、みなさんと話ができる絶好の機会です。ほぼ皆さん私より年長者であり、水田の単作兼業農家の方と、定年後専業になった方がほとんどです。この辺の地域は丹波黒大豆と大納言小豆の産地であり、それに比べて単価の安い白大豆(豆腐用)のみを栽培する世羅協同農場に、いろんな意味で興味を持たれます。
事務所を能勢農場の春日育成牧場内に間借りしていることで、「牛飼いをしながら農業もしている」と勘違いされている方や、「交雑種ではなく、但馬牛を肥育している」と思ってる方もおられます。
丹波市に農場を移し、1年半が経過しました。農地は2.5ヘクタールから7ヘクタールに増えました。1作目の大豆は大豊作で、その後の大麦、小麦は鹿による獣害と湿害によって苦戦していますが、今のところ、収穫目標ぐらいは確保できると考えています。職員なしの一人で日々作業をしていますが、一日に何度も集落の方が声をかけてくれます。例えば、草刈りをした次の日には「きれいに刈ったね」などと。孤独感はなくなりますが、手抜きができなくなりました。また、野菜を分けてくれる方もいます。自家用と御返し用に、何か少し作ろうと思っています。
こんな感じで、日々頑張っていこうと思います。遊びに来られるなら5月の後半に。麦畑が見れますよ。
(世羅協同農場 近藤 亘)

あと1カ月もすれば、田植えを終えた広大な田んぼが、
写真のように一面に広がります
- 前の号へ
- 次の号へ
▲
Copyright © 関西よつ葉連絡会 2005 All Rights Reserved.