牛肉に用いられる肥育ホルモン剤の残留基準が従来の暫定基準からWTOの基準へ変更(緩和)されました。肥育ホルモン剤とは性ホルモン剤のことで、この薬剤を用いると、牛の成長が早まり太ります。もともと国産の牛には用いられていませんから、輸入牛肉の問題ですが、その残留基準が一部規制していたものも緩和されて、WTO(世界貿易機関)の基準に合わせることが決まり、輸入促進が図られるのです。米国産、オーストラリア産、カナダ産牛肉には、この危険性が高い肥育ホルモン剤が使用されています。とくに危険なのが米国産です。
この肥育ホルモン剤には、天然のホルモン剤として雌のホルモン剤2種類と雄のホルモン剤1種類の3種類があり、その3種類にそれぞれ合成タイプがあり、計6種類があります。天然タイプは、WTO の基準がなく使い放題です。合成のタイプは3つとも残留基準が設定され、日本もその基準に合わせることになったのです。ちなみに米国では、この合成ホルモン剤の残留基準が1種類しか設定されておらず、2種類は使い放題です。では、天然のタイプは安全かというと、けっしてそんなことはありません。ヨーロッパでは1980年代末以降、薬剤使用に対するEU各国の国民の抵抗感が非常に強いため、天然も合成も関係なく使用が禁止されていますし、米国やカナダからの輸入もホルモン剤が使われていることを理由に禁止しています。
ホルモン剤がなぜ危険かというと、それが微量でも牛肉に残留して、私たちの体内に取り込まれるとホルモンがかく乱されるため、さまざまな病気や障害になりやすいからです。とくに影響を受けるのが生殖系です。また細胞分裂を促進することから、がんにもなりやすくなります。肥育ホルモン剤との関係で特に疑われているのが乳がんです。ヨーロッパでは、ホルモン剤の使用や牛肉輸入が禁止されて以降、乳がんが減少しました。日本では増え続けています。貿易促進を優先すれば、市民の健康は二の次にされてしまいます。
Copyright © 関西よつ葉連絡会 2005 All Rights Reserved.