2021年『Life』50号 日本で最初の「ゲノム編集食品」が流通可能に

日本で最初のゲノム編集食品として、「高GABAトマト」の流通が可能になりました。年末押し詰まった時期に筑波大学発のベンチャー企業サナテックシード社によって、このトマトが農水省・厚労省に登録されたからです。環境影響評価や食品や飼料としての安全審査も必要ないため、このまま流通が可能になり、表示もないまま私たちの食卓に登場することが現実になりました。これまで市場に登場したゲノム編集作物は、米国でカリクスト社が開発した高オレイン酸大豆だけで、これはまだ国内に入っていません。しかし、このトマトにより日本で開発されたゲノム編集食品が、最初に市場へ出回る可能性が出てきたのです。
このゲノム編集トマトは、人間の血圧の上昇を抑える働きがある物質のGABAを多く含むようにゲノム編集したものです。通常のトマトより4~5倍多いと報告されています。開発したゲノム編集トマトは、品種改良のための親として利用し、子孫を食用として販売する予定だそうです。
このトマトは国家プロジェクトで開発されたものでありながら、審議は非公開で行われました。これまでどのくらい予算が使われたかも報告されていません。ゲノム編集技術の問題点として指摘されてきた、目的以外のDNAを切断してしまうオフターゲットについては、全ゲノムを調査したものではなく、まったく不十分です。安全性は確認されたとは、とても言い難いものです。食品表示もないため、消費者は選ぶことができません。
- 前の記事へ
- 天笠啓祐さん:
- 環境・食品ジャーナリスト。市民バイオテクノロジー情報室代表。
「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」代表