2020年『Life』440号 培養肉・人工肉が拡大を見せています

いま牛や豚などの食される部分を細胞培養して作る培養肉が脚光を浴びています。バイオ技術を用いて工場で生産し、食用動物の肥育を行わなくてすむことから、将来の食料問題の解決につながるとして登場しているのです。日本でも2019年にJAXA(日本宇宙航空研究開発機構)が、培養肉を含む食料を宇宙で生産し消費する計画を立て、企業、大学、研究機関が参加して開発に取り組み、日清食品も本格的研究課題に取り上げ、徐々に現実味を帯びてきました。
たとえ食品になったとしても、栄養や味はどうなのか、という問題は残ります。味覚改良や栄養分の補給のために、さまざまな添加するものが開発されることになりそうです。それを先行させた事例が、インポッシブル・バーガーです。
米国企業のインポッシブル・フーズ社が開発、生産しているこのバーガーは、すでに米国・香港の1000以上のレストランで提供するまでに拡大しています。遺伝子組み換え大豆を用いて大豆ハンバーグを作り、そこに肉らしさを加えるために酵母によって生産された、鉄含有血液色素のヘム分子を注入しています。このヘム分子が同社の有力な特許になっています。これは培養肉にも使えそうです。
培養肉もインポッシブル・バーガーも、いずれも食糧問題を解決し、環境に優しく、動物を殺さなくてすむことからアニマルウェルフェアになることを売り物にしています。私としてはとても食べる気が起きません。

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- 天笠啓祐さん:
- 環境・食品ジャーナリスト。市民バイオテクノロジー情報室代表。
「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」代表