2023年『Life260号』「RNA農薬の開発が進む」
化学農薬に代わり開発が活発化しているのが、RNA農薬です。遺伝物質のRNAを農薬に用います。農薬メーカーが、主に殺虫剤として開発を進めていますが、除草剤にも応用が可能です。政府や農薬メーカーは、化学農薬ではないので安全だと喧伝して推進しています。有機農業にも使われる可能性があります。本当に安全でしょうか。
RNA農薬は、RNA干渉法という遺伝子の働きを妨げる方法を用いて、虫を殺したり、草を枯らします。遺伝子の働きを阻害するという点では、ゲノム編集技術に似ています。すでにバイエル社、BASF社、シンジェンタ社などの農薬企業が、この農薬の開発を進めており、ジャガイモの害虫コロラドハムシを対象にした殺虫剤などがすでに開発されています。また最近になって、味の素がRNA農薬の量産系を開発したと発表しています。
多くの生命体が共通の遺伝子をもっており、対象とした害虫だけでなく、ミツバチなどの益虫や、人間も含むさまざまな動物の遺伝子を阻害し、害を及ぼすのではないか懸念されます。たとえば死に至らないまでも、繁殖に必要な遺伝子を抑制してしまうなど予期せぬ影響が起き得ます。この農薬の安易な使用拡大は、生物災害という取り返しがつかない大きな災害につながる危険性があるのです。
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- 天笠啓祐さん:
- 環境・食品ジャーナリスト。市民バイオテクノロジー情報室代表。
「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」代表