2020年『Life』200号 “グリシン”がもたらす諸問題

グリシンは食品表示でよく見かける添加物です。大変重宝がられ、よく利用されています。この添加物はアミノ酸で、あらゆるたんぱく質に含まれるといっても過言ではないくらい、当たり前に存在している物質です。それをアミノ酸として取り出し、利用しています。毒性はほとんどなく、それ自体が問題となることがないと見られています。
問題は、グリシンの使われ方にあります。グリシンは毒性もほとんどない代わりに、薄い甘みがあり、味覚での効果は弱いのです。にもかかわらず大量に用いられる理由は、pH 調整作用や制菌作用があるからです。グリシンを大量に用いれば、保存料を使用しなくてすみ、「合成保存料・合成着色料不使用」という表示ができるのです。
さらにもう一つグリシンが使われている理由は、甘みが薄いため、さまざまな料理や加工食品に用いると、さりげない甘みをもたらし、本物の味と錯覚させることができるのです。見せかけの本物の味ということができます。
しかし、何より問題なのは、実際の塩分よりも塩味を薄める効果です。グリシンはコンビニおにぎりによく用いられていますが、そこには大量の塩が用いられています。しかし、グリシンを用いると、塩分をほとんど感じさせないのです。日本人は塩分を取り過ぎていることが分かっています。少しでも塩分を減らしたいものですが、グリシンは知らないうち
に塩分過剰摂取をもたらしてしまいます。

- 前の記事へ
- 次の記事へ
- 天笠啓祐さん:
- 環境・食品ジャーナリスト。市民バイオテクノロジー情報室代表。
「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」代表