2019年『life』160号 「ゲノム編集食品」に規制なし

日本ではゲノム編集食品の安全審査は必要なく、規制せずという方針が固まりました。厚労省は食品衛生法に基づく安全審査を行うかどうか、昨年9月から検討を加えてきましたが、1月17日には報告書をまとめ、2月には公開の説明会を開催、一般からの意見募集も終えたことで、4月1日から
安全審査が行われない食品が食卓に登場する可能性が出てきたのです。ゲノム編集は、DNAを切断して遺伝子の働きを壊して品種の改良を行うという実に乱暴な技術です。
これに対して消費者団体は、1月29日、厚労省、食品安全委員会、消費者庁の出席を求めて、衆議院議員会館内で集会を行いました。事前に出されていた質問は、①ゲノム編集技術自体がまだよく分かっていない段階で、
安全審査を事実上不要にすることは拙速ではないか。目的とした遺伝子だけでなく他の遺伝子も壊してしまうオフターゲットなどの問題点が指摘されているが、それをどう考えるか。②ゲノム編集技術の扱いを、食品衛生法での「組み換えDNA」の定義に当てはまるかどうかで判断している。ゲノム編集と組み換えDNAでは、異なる技術であり、
ゲノム編集そのものについて安全審査を行う制度を別途作るべきではないか。③食品衛生法での安全審査を免れてしまえば、食品表示が行われなくなってしまう。それは
消費者の知る権利、選ぶ権利を奪うものではないか、というものです。
その回答は、①専門家の見解で安全に問題はない、②制度を変更したり新たに設置する必要はない、③事業者や国際的な整合性などを配慮して食品表示は決める、という、実にお役所的な素っ気ないものでした。
政府が消費者の方を向いていないことを、あらためて思い知らされました。

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- 天笠啓祐さん:
- 環境・食品ジャーナリスト。市民バイオテクノロジー情報室代表。
「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」代表