よつばつうしん
2016年6月号(No.063)


電力小売全面自由化
−自然エネルギーの電力会社を選ぼう!−
吉田明子(FoE Japan)
 

2016年4月からいよいよ始まった電力小売全面自由化。しかし、大手新電力の多くの広告宣伝は、「安さ」に注目するものです。市場規模8兆円のうち、約7.5兆円は一般家庭です。これまではすべて大手の電力会社に支払われていたこのお金を、再生可能エネルギーを重視する電力会社に今後どれだけ振りかえられるでしょうか。


◆電力自由化で石炭・原発推進が加速!?
 そもそも日本のエネルギー政策は、2014年のエネルギー基本計画、2015年の長期エネルギー需給見通しで示されているように、原発・石炭火力を重視するもので(2030年に原発20〜22%、石炭火力26%)、省エネルギー、再生可能エネルギーは不十分です。
 2015年12月のCOP21パリ会議では、すでに多くの被害をもたらしている気候変動を止めるために、気温上昇を2℃未満/1.5℃未満におさえていく必要性が世界で合意されました。このために温室効果ガスの排出も実質ゼロにしていくこと、また各国がすでに提出している削減目標を5年ごとに見直して強化していくことも書きこまれました。この方向に対しても、現在の日本のエネルギー政策はまったく不十分です。
 他方、電力自由化による価格競争を見すえて、「価格が安い」とされている石炭火力発電所の新規建設計画が2013年以降非常に増えています。「石炭火力発電所ウォッチ(http://sekitan.jp/plant-map/):気候ネットワーク」によれば、現在47基、2250万キロワット(原発20基分以上!)の計画があり、仮にこれらがすべて建設されれば、「2030年に石炭26%」とされている量を超えてしまいます。
 電力業界は、2030年度にCO2の排出係数を0.37kg-CO2/kWhに抑えるという「自主目標」を持っているものの、石炭火力発電所の新増設をする一方で「非化石電源」を活用していくというものです。「非化石電源」とは再生可能エネルギーと原発のことです。今後は、新電力会社も含めて電力業界全体として、原発の再稼働を後押しする流れが見えてきています。


石炭火力の二酸化炭素の排出係数は 天然ガス火力の2倍以上!
(経済産業省資料より)

つまり、小売全面自由化で「安さ」が追求されると、私たち自身が原発再稼働や石炭火力発電を後押しすることにつながってしまうのです。自由化によって本来経営的に不利になるはずの原発も、「事業環境整備」という形で国が関与を強め、維持していく方向に動いています。
 これらは省エネ・再エネに向かう世界の流れに逆行するばかりか、すでにあらわれている気候変動被害の現状からみても許されるものではありません。だからこそ、持続可能な社会をつくるビジョンを持って再生可能エネルギーを重視する電力会社を後押ししていく必要があるのです。そのような電力会社は、全国各地にあらわれてきています。


◆再生可能エネルギーを重視する電力会社とは?
 では、「再生可能エネルギーを重視する」電力会社とはどのようなものでしょうか? 注目すべきポイントはこちらです。

1. 電源構成や環境負荷などの情報を一般消費者にわかるように開示していること
2. 再生可能エネルギーの発電設備(FIT=固定価格買取制度を含む)からの調達を中心とすること
3. 原子力発電所や石炭火力発電所からの調達はしないこと(常時バックアップ分は除く)
4. 地域や市民による再生可能エネルギー発電設備を重視している
5. 大手電力会社と資本関係がないこと(子会社や主要株主でない)



よつ葉ビルで講演する吉田明子さん(3月30日)

現在、これらの5つを満たす方向で、各地の小さな電力会社が鋭意準備中です。ただ、困難や課題も山積みです。日本の再生可能エネルギーの割合はまだまだ低く(2014年に大型水力含めて約12%)、かつそのほとんどが既存の大手電力会社の所有であるため、再エネの調達が大きな課題です。そのため「再エネ(FIT含む)○%以上」との線引きは現状難しいですが、できる限りその割合を高める取り組みを応援していく必要があります。
 パワーシフト・キャンペーンでは、そのような電力会社の現状を可視化し、後押しすることを目指します。2016年5月現在、14社の情報をウェブサイトに掲載中、今後も追加していきます。
 すぐに申し込みできるところは、まだ多くないかもしれません。しかし、半年、1年たてば選択肢も増えてくるでしょう。今できることは、「再エネ電気を買いたい」あなたの声を可視化すること。まずは「パワーシフト宣言」にご登録ください(eメールで情報送付)。
「パワーシフト宣言」>
http://power-shift.org/declaration

 いずれにしても、私たちが電気料金の支払いを通じて意思表示をし、未来をつくっていくことができる大きなチャンスです。将来どのような社会をつくりたいのか。安さだけではない選択を一緒に広げていきましょう!

240号(5月23日からの週)で「パワーシフト・キャンペーン」のチラシを配布しました。あわせてご覧ください。 (編集部)



よしだ・あきこ
学生時代より環境問題に取り組み、FoE Japanボランティア、ドイツへの語学留学、リサーチ会社勤務をへて2007年より国際環境NGO FoE Japan、気候変動・エネルギー担当。311以降は福島や原発・エネルギー問題に携わる。脱原発のネットワーク「eシフト」やパワーシフト・キャンペーンの事務局も担当。

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