よつばつうしん

2016年5月号(No.062)

 
つくる あそぶ 食べる 基調講演:水野和夫さん(日本大学国際関係学部教授)
震災から5年、私たちの未来を展望する

3月5日・6日に「2016春 よつ葉交流会」を開きました。2日間にわたる熱い講演と討論、そしてなごやかな昼食会と、とても充実した交流会でした。全国からかけつけてくださった生産者のみなさん、参加してくださった多くの会員さん、そしてよつ葉職員のみなさん、ありがとうございました。今月号は、その報告特集号とします。水野さんの基調報告を受けた1面、6面・7面では3つの分科会報告、5面の「読書クラブ」も関連図書です。 


「よりゆっくり、より近く、より寛容に」の提起を受けて
関西よつ葉連絡会事務局長 田中昭彦


水野和夫さんによる基調講演に300名が参加。
左端は司会の田中さん。
(3月5日、都ホテルニューアルカイック)

「中世から近代に移行するのに二百年くらい必要だったのだから、資本主義から次のシステムに移行するのに同じくらいの時間が必要だと考えるのが自然でしょうね」。基調講演会をお願いするために、静岡県三島市の研究室を訪問したときの水野先生の言葉です。私のいきなりの質問にも笑顔で答えていただきました。
 歴史的にみると、17世紀初頭のイタリア・ジェノバでは11年間にわたって金利2%以下が続き、行先を失った資金がオランダに流れ込んだ結果、地中海資本主義から近代資本主義システムに移行していったという話があります。現在、多くの先進資本主義国で利子率=利潤率は2%を下回る状態が常態化し、日本では0%金利からマイナス金利へと移っています。これが資本主義の構造的な行き詰まりの問題だとしても、新たな経済システムが生み出され、そこに移行していくまでに二百年もかかるということになるのでしょうか。
 古典派経済学者が、富の増加が停止した状態を「(悲惨な)停止状態」としてその到来を恐れたのに対して、19世紀のイギリスの経済学者JSミルは、富の増加が停止した状態でも人口抑制と富の再分配により悲惨な状態にはならず、人間的進歩が図られる、はるかにすぐれた社会状態であると考えました。成長を基本的前提とする現代の経済学の枠内では、ミルの主張は省みられることはなく、むしろ思想や哲学の話と考えられています。水野先生の言われる「より速く、より遠く、より合理的に」から「よりゆっくり、より近く、より寛容に」と転じる「定常化社会」のイメージが、ミルの「定常状態論」と重なるとすれば、「システムの移行」は資本主義システムが構造上の欠陥で崩壊することよりも「人々の選択」という要因が大きいということになるのかもしれません。
 先ごろ来日された「世界でもっとも貧しい大統領」と呼ばれる前ウルグアイ大統領のホセ・ ムヒカ氏の有名なスピーチは多くの日本人が知ることになりました。2012年にブラジルで開催された「国連持続可能な開発会議」で行った演説。「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に多くを必要とし、もっともっとと欲しがることです」「乗り越えなければならないのは私たちの文明のモデルであり、見直すべきは私たちの生き方なのです」。
 ムヒカ氏は居並ぶ各国首脳を前に、大量消費社会やグローバリズムを批判し、世界の注目を集めました。これを単なる精神論と捉えるか、「定常化社会」のあり方のひとつとして考えるか、まさに未来を展望する上で重要な選択肢のひとつだと思われます。
 最後に、基調講演会で示唆に富んだお話をしていただいた水野先生に、紙面を借りてあらためてお礼を言いたいと思います。どうもありがとうございました。

 
歴史的転換期見すえ「食」の現場での模索の必要痛感
関西よつ葉連絡会 鈴木伸明

「より早く、より遠く、より合理的に」という時代から、これからは「よりゆっくり、より近く、より寛容に」という行動原理に変わって行く時代の変り目にあるとの水野さんの話。長い歴史時間の中で今の時代を認識し、これからを考えることの大切さ、また経済のあり方は社会の骨格であることからその歴史的な変遷を把握する視点を見つけなければならないこと。経済のことはわからん!というわけにはいきません。
 資本主義的な経済の始まりは13世紀のヨーロッパ、長い間禁止されていた利子が容認された時代ということです。貨幣は持っているだけでは「石」だが、資本に転化することで「種」になる。種に変わる条件が利子の発生ということで、石と種という喩えで資本とは何か?を説明されると、なるほどと考えることの多い講演でした。
 資本は800年以上の歴史の中で、成長と停滞そして破局を繰り返しながら地理的空間的(地理的拡大とは新大陸の発見とそこからの富の収奪などのこと、また空間的とはネット上の場など、その顕著な例が金融市場のかつてなかった世界的なレベルでの規模の拡大)にその領域を拡げ、今では全世界的に、人々の暮らしに絶大な影響を及ぼすまでになりました。同時にそのことは、これ以上拡大させていく領域がなくなった、ということになります。
 経済の停滞が言われて数十年が経ちますが、その本質的な理由は資本の歴史的な流れの中に答を見出す必要があり、目先の現象ではない、ということなのです。今の経済、社会はもういつまでも続けられない、続けようとすればするほど、人々により多くの苦難をもたらすことになります。
 私たちも「食」の現場で、「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」そんな社会のあり方を求めていくことにつながるような実践を今以上に模索していく必要があることを感じ入った講演でした。



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