よつばつうしん
2014年11月号(NO.044)

視点論点

都会人よ、田舎へ大移動を!
長谷川 浩(早稲谷大学主宰) (農業・作家)

山あいの小さな田んぼに田植え


■地球の限界を超えた人間活動
 日本ではゲリラ豪雨が頻繁に起きています。アメリカ西海岸では、雨がまったく降らず山火事が相次いでいます。世界中で異常気象がごく普通になってしまいました。異常気象が止まらなくなることを危惧した人たちが9月にニューヨークで行われた気候変動サミットに合わせて結集しました。異常気象に対する危機感がこれまでにないほど高まっています。
 石油の生産減少が近づいています。石油供給が世界の需要を満たせなくなれば、ガソリンが1リッター1000円になることもあるでしょう。そうなれば、フランス産ワインやオーストリアの牛肉がとても高価になり、海外旅行もできなくなるでしょう。網の目のようなトラック輸送のコストが高くなれば、コンビニは軒並み閉店してしまうかもしれません。さらに事態が悪化すれば、海外からの食料輸入が停止してしまうかもしれません。日本に食料を輸出している国は大規模農業で石油なしには生産できません。さらに、遠くからかさばる食料を運ぶにも石油が必要だからです。
 日本の農家は年々少なくなりしかも高齢化しています。それでも消費者に農産物を供給できるのは農業機械と施設のおかげです。燃料となる軽油が高騰すれば、農産物価格も高くなるでしょう。
 要は、人間活動が有限な地球の限界を既に超えてしまっているのです。そもそも、石油は有限で掘り出せばいつかなくなります。排出された二酸化炭素は地球の吸収能力を超えており、このままでは早晩、異常気象に歯止めが効かなくなることは明らかです。人間活動を地球の限界を超えないようにするしか方法はありません。それは、食料を生み出す農業と漁業、燃料と建材を生み出す林業が身近にあり、しかも雇用を生み出す社会に転換することです。大都会に一極集中するのではなく、地方(田舎)に多くの人が分散して住む社会です。

■自然の中で生きる術を身につけよう
 個人でできることは、田舎に移り住んで自然の中で生きる術(サバイバル力)を身につけることです。具体的には、1)田畑を100m2(1アール)でいいから自ら耕し、お米、麦、イモ、野菜を育てる。2)里山の木を伐って、ストーブやボイラーの燃料に利用する。3)草食動物の牛、馬、ヒツジ、ヤギ、ウサギなどを飼って草を資源にして、皮、肉、乳、ふん尿などを利用する。4)井戸水や沢水の活用などです。数年かけて移住の準備をしたらどうですか。
 移住先では先生がいないと何ごともうまくいきません。「ダッシュ村」の三瓶昭雄さんのような、おおむね80歳以上の田舎のお年寄りは驚くほどのサバイバル力を持っています。移住先でこのようなお年寄りをみつけて教えてもらうといいでしょう。お年寄りなので、もって10年。教われる時間は限られていますので、ずっと先という訳にはいきません。
 古里の親せきあるいは特定の農家とつながる方法も重要です。個人でできることには限界があるからです。具体的には、古里や農家のところに定期的に出かけて、農作業を手伝いながら信頼関係を深めます。最初は足手まといになるだけですが、年を重ねれば多少の手助けにはなるでしょうし、なにより農業の現状とサイクルがみえてくるでしょう。子どもたちも連れて行き、農業体験するのがいいでしょう。林業についても同じような経験ができるといいです。

■一次産業のある社会を次世代へ


4年間耕作放棄された水路の草刈り

子どもたちに一次産業のある社会を残し、自然の中で暮らす知恵を授け、その中で雇用を創出して生きることが、なによりの次世代への贈りものではないでしょうか。雇用を創出するために、地域でお金がまわるようにします。例えば、農産物は農家から直接買って農家の手取りを多くします。お米でいえば、慣行栽培で60kg15,000円以上、有機栽培で60kg25,000以上が目安です。地元の食材を使った地産地消のレストランもいいと思います。お酒、しょう油、味噌、酢などの加工品も地域の農産物で作り、地元で消費します。暖房や給湯に薪やペレットを使えば,燃料代は地域のものとなります。家を新築・改築する時は地元の木材を使います。雇用創出にはいろいろな方法があると思いますので、移り住む田舎でどうするか、皆さんも考えてみてください。
 大都会の生活は地方からエネルギー、農産物、そして人材を供給されて成り立ってきました。しかし、石油が利用できなくなれば、食料をはじめ生存に必要な物資が大都会に運ばれなくなるでしょう。その前に、中央集権から田舎に分散して、農産物もエネルギーも人材育成もその場所で自給する社会へ転換する必要があります。それこそが、地球の限界を超えないで人類が存続する唯一の方法なのです。
 筆者は、都会人のサバイバル力向上のための私塾『早稲谷大学』を週末に開催しています。なるべく機械を使わないで、お米、麦、ジャガイモ、雑穀を育て、山の木を伐って薪にして燃料とし、耕作放棄地を開墾し、わら細工や豆腐・うどん作りを学んでもらっています。興味ある方はFacebookかメール(yuki_gakkai@mac.com)に連絡ください。福島県への移住も歓迎します。


 

はせがわ ひろし 岐阜県出身。国の研究所で有機農業の技術開発に従事。原発事故を契機に退職。福島県会津地方の山奥で馬を使って耕作放棄地を開墾して自らの食料を生産し、山の木を伐って燃料にする自産自消を実践。有機農業と自然エネルギーによる福島再生を目指している。著書『食べものとエネルギーの自産自消』『放射能に克つ農の営み』(ともにコモンズ刊)。農学博士。

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