よつばつうしん
2014年7月号(NO.040)
視点論点
『暮らし目線のエネルギーシフト』
著者より
キタハラマドカ(フリーライター)

私が『暮らし目線のエネルギーシフト』の執筆に着手したのは2012年の秋のことで、当時の民主党政権の元で新しい「エネルギー基本計画」の策定に向け議論が行われている最中でした。2012年の夏は、政府が2030年、2050年のエネルギー源の割合を広く国民に問い、国民的議論が盛り上がっていました。

●地方活性化のカギ ご当地電力


 


今年2月には地元・山形県の工業高校の生徒が横浜まで出前講座に。ソーラーパネルの自作ワークショップを体験する筆者

私は東日本震災と原発事故前から、地方都市の活性化のカギは自然エネルギーにあるのではないかと、環境ライターの立場で全国のご当地電力の萌芽を取材して歩いていました。東日本大震災後、子育て中の女性たちは、原発事故への怒りと放射能への不安でいっぱいで、私自身も原発事故直後は食や居住の選択に関して情報が玉石混淆で、ネガティブな感情に押しつぶされそうになることもありました。この事故の根本原因と社会を本気で変えていくためには、エネルギーの仕組みや政策を真っ正面から見つめていく必要があるのではないかと感じ、2011年4月に、近所の仲間たちと「あざみ野ぶんぶんプロジェクト」を立ち上げました。あざみ野は横浜北部の地名で、女性らしい響きがあります。「ぶんぶん」は映画『ミツバチの羽音と地球の回転』の鎌仲ひとみ監督の造語で、ミツバチ1匹の羽音は小さいけれども、たくさん集まれば大きな共鳴を生むという意味から名付けています。
 あざみ野ぶんぶんプロジェクトでは映画の自主上映以降、月1回以上のペースで自然エネルギーに関する勉強会や近所のマイクロ水力発電所の見学ツアー、地元の政治家との対話などを重ねてきました。2012年夏のエネルギー政策の国民的議論に向けて、生活のプロの視点を伝えようと『お母さん版エネルギー基本計画』を策定し、地元の国会議員を通じて当時の野田首相や環境大臣・経産大臣に届け、国家戦略担当大臣には面会して直接手渡す機会に恵まれました。この時感じたのは「王道に勝る近道なし」。市民の論理を磨き、地元の政治家と正々堂々と議論して声を託す。そこから逃げて批判ばかりしていては何も変わらない、と実感しました。エネルギー基本計画に関する基礎的な情報と、私たちの学びの軌跡を本書では詳しく述べています。

●ソーラーワークショップを開催



今年5月には地域住民向けに独立型ソーラーシステムのワークショップを開催

頭を使い議論する活動と同時に始めたのは、同じ神奈川県で電力の自給を目指す藤野電力に学び、主婦目線で独立型ソーラーワークショップを開催することです(独立型は送電線にはつながず電力の売買は行わない)。女性にとって難しいと思われる電気の仕組みを、メンバーの一人がイラスト図解や文学的な表現でわかりやすく翻訳し、日頃使っている家電のうち何を自作ソーラーでまかなうのか、計算するシートもつくりました。私たちは自らを「エレキガール」と呼び、男性顔負けに工具を扱い、それを楽しそうに発信しているうちに、地元で評判を呼ぶようになりました。地域のイベントに自宅のソーラーシステムを貸し出したり、子どもが環境絵日記で入賞するなど、少しずつですが啓発効果も出てきています。
 家でソーラー生活を始めると、家電の効率的な使い方にも目が向くようになります。一度にたくさんの電気を使わなければ、電力会社との契約アンペア数を下げることができ、基本料金がお得になること。家電の特性によって消費電力量が大きく異なること。暖をとるために電気を熱に変えず、熱を熱のまま有効利用すること。電気だけではなく、光や熱との付き合い方を上手にすれば、相当な省エネができることもわかってきました。あとは地域金融の省エネ融資の活用やグリーン電力商品の購入で企業や生協を応援するなど、社会や経済のシステムからエネルギーシフトに近づくためのノウハウもあります。本書では2013年秋の出版時期までの最新情報を網羅してあります。

●市民電力会社の設立へ


出版から半年が経ち、私は今、市民共同発電の会社設立に向け動いています。震災直後に地元の主婦たちと始めた小さな活動は、継続し、自らのメディアで発信を重ねることで、地域の大手企業や行政との結びつきが生まれ、地元に住む有識者や研究者、地域のキーマンとのチームができて、電力会社誕生前夜、この展開に自分でも驚いています。今年2月に福島県で開催された「コミュニティパワー国際会議」で登壇する機会にも恵まれ、「エネルギーの世界に女性の視点を取り入れよう。“かわいい・楽しい・美味しい”切り口でエネルギーを発信し、仲間を増やしていこう」と呼びかけ、たくさんの応援をいただきました。エネルギーと食は私たちの暮らしになくてはならない消費財です。大きなシステム任せではなく、できる限り自分たちの近くから得て、あるいは自らそれをつくってみる。専門用語ではなく暮らしに密着した言葉で伝えていく。批判ではなく提案型の、誰もが楽しめる場と機会を用意する。チャーミングに、元気よく、ポジティブに発信しながら、巻き込み型の活動を今後もしつこく続け、地域にかけがえのない同志を増やしていきたいと思っています。

暮らし目線のエネルギーシフト	キタハラマドカ

『暮らし目線のエネルギーシフト』
キタハラマドカ【著】 2013年11月 コモンズ
四六判 192ページ 1728円(本体1600円)
注文番号
42055
注文受付期間:7/14(月)〜7/19(土)
配達期間:7/28(月)〜8/2(土)
*『ライフ』本誌25ページもご覧ください
キタハラマドカ 1977年生まれ。山形出身で月山から名前を受ける。横浜北部の地域新聞記者・エコ住宅雑誌の編集部を経てフリーに。地球温暖化対策専門メディアの取材班、生協の広報、地域情報雑誌の編集など、暮らし・食・子育て・地球環境・エネルギーをテーマに執筆活動を行う。2009年に長女を出産後、市民メディア『森ノオト』をスタート。3.11を機に足下からのエネルギーシフトを目指す市民団体「あざみ野ぶんぶんプロジェクト」を立ち上げ、活動は市民電力会社「たまプラーザ電力」へと続く。

 

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