よつばつうしん
2012年12月号(NO.021)

遺伝子組み換え作物の現状と明らかになった危険性
暴走する生命操作の商業化
天笠啓祐(フリージャーナリスト)

 生命操作に歯止めがかからなくなり、暴走した状態にあるといえます。そのひとつの象徴がiPS細胞です。いまiPS細胞から、さまざまな臓器や組織を作ったり、はては精子や卵子といった生殖細胞作りが進められています。さらには、その精子や卵子を受精させることで、機能が正常か否かを確認したい、という研究者の声が大きくなっています。もしその受精から、生命が誕生すれば「人工人間」となります。生命を扱う科学者の世界は、より危うい世界へと入り込んできています。
 このように倫理面や安全性よりも、企業化・商品化が優先されているのが、いまの科学の世界です。中でも大規模に商業化が進められてきたのが遺伝子組み換え(GM)作物です。


自生するGMナタネ(鹿島港周辺にて)

GM食品の現状
 GM作物を原料に含んだ食品は、スーパーの棚に多数並んでいます。現在、流通しているGM作物は、主に大豆、トウモロコシ、ナタネ、綿の4作物です。たとえば、食用油や油製品、醤油の大半がGM作物を用いています。そのほかにも、加工食品の原料や食品添加物の多くに「植物油」「植物加水分解物」や「糖」などの形で、大豆やトウモロコシ由来原料が使われており、そのほとんどがGM作物由 来です。その結果、私たち日本人が最もGM食品を食べていることになります。
 しかし、多くの消費者が、その実感を持っていません。それは、豆腐、納豆、味噌などごく一部の食品しか表示されていないからです。なぜこのような表示制度になったかというと、米国政府の圧力によるもので、米国産の大豆やトウモロコシの輸出が影響を受けないようにしたからです。
 このところGM作物がもたらす環境への影響や経済的な損失も目立つようになってきました。日本では、GM作物は栽培されていません。しかし、輸入した作物がこぼれ落ち、自生が拡大しています。現在、日本に入っているGM作物は、いずれも主に油や飼料目的で輸入されています。そのため輸入の形態はすべて種子であり、こぼれ落ちるなど、環境中に撒かれると自生します。
  とくに自生が広がっているのが、ナタネです。輸入港である鹿島、千葉、四日市、神戸、博多などでは、 毎年、多くのGMナタネの自生が確認され、ブロッコリーなどのアブラナ科の植物との交雑も確認されるようになりました。この自生の広がりが思わぬ波紋を広げています。三重県では、GMナタネの自生が拡大したため、県の特産品である菜花との交雑の可能性がでてきたとして、同県内での自家採種を断念する事態に追い込まれました。
 沖縄では、GMパパイヤ種子が知らないうちに違法に台湾から輸入され、作付されていたことが発覚し、ほとんどのパパイヤが伐採されたり、非GMパパイヤの価格が下がるなど、農家が大変な被害をこうむりました。
 このように環境への影響や農家の被害、食卓の不安が増幅した上に、さらに不安を上乗せしようとしているのがTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加問題です。米国政府は、食料を売り込む世界戦略を展開しており、その柱にGM作物を据えています。その売り込みを促進するため、すでにTPPの構成国であるニュージーランドに対して、最大の貿易障壁は食品表示にあるとして、GM食品の表示撤廃などの圧力を強めています。
 現在、日本では消費者庁によって、食品表示の抜本的改正が検討されています。しかし、TPPに加盟すれば、そのような動きも吹っ飛んでしまいます。TPPは、食料自給を奪い、輸入食品を増大させるだけでなく、食の安全を奪い、さらに消費者の知る権利の要である食品表示の撤廃に及ぶことになり、食卓にさらに大きなリスクを加えることになります。  現在、世界でのGM作物の栽培面積は、約15億haある世界の農地の10%強に達しています。その種子の半分以上を、わずか3社が提供する寡占化が起きています。しかも、トップ企業のモンサント社は全世界の種子の27%を支配し、2位デュポン、3位シンジェンタ
は、いずれも遺伝子組み換え種子開発企業です。種子を支配し、食料を支配するためのGM作物開発であることが、いっそう明瞭に なってきました。それを後押ししているのが、米国の食料戦略であり、その有力な武器が貿易自由化圧力です。

明らかになった危険性

モンサントのGMトウモロコシ(同社茨城県の圃場にて)

  このようにGM作物を栽培し、国際的に流通させる圧力が強まる一方で、さまざまな問題点が明らかになっています。中でも食品としての安全性に関して、多くの動物実験により、その問題点が指摘されています。2009年5月に、米国環境医学会が発表した声明は、それまで行われた動物実験を総点検したところ、GM食品はとても安全とはいえず、作付けや流通の一時停止を求める、というものでした。どのような問題が生じているかというと、@免疫系への影響、A子孫の数が減少するなどの影響、B肝臓や腎臓などの内臓の傷 害でした。
 最近では、フランス・カーン大学の分子生物学者セラリーニ等が行った動物実験が、世界中に波紋を広げています。GM食品の安全性を評価した実験で、顕著な有害性が示されたからです。実験は、除草剤耐性トウモロコシ、除草剤ラウンドアップ、その組み合わせの3通りで行われ、それぞれオスとメスで評価され、論文は「食品と化学毒物学」誌9月19日号に掲載されました。
 3通りの投与群は非GM飼料を与えた非投与群に比べて、それぞれ少しずつ違いはあるものの、寿命の短縮化など、低い暴露でも影響があることが分かりました。また雌と雄では影響の出方が異なっていました。雌では、乳がんと脳下垂体の異常が多かったのです。雄では肝機能障害と腎臓の肥大、皮膚がん、消化器系への影響がみられたのです。もはやGM食品の危険性は明らかです。

【あまがさ けいすけ】
1947年生まれ。環境問題を専門とするフリージャーナリスト。市民バイオテクノロジー情報室代表。『いのちを考える40話 脅かされる地球・食品・人体』(解放出版社)、『遺伝子組み換え作物はいらない! 広がるGMOフリーゾーン』(家の光協会)、『バイオ燃料―畑でつくるエネルギー』(コモンズ)、『危険な食品・安全な食べ方 自らの手で食卓を守るために』(緑風出版)、『生物多様性と食・農』(緑風出版)、など著書多数。