よつばつうしん
2011年6月号(NO.003)


農の営みは「効率優先」とは相容れない
くまもと有機の会

人参の草取り。除草剤を使えば、10分で終わるところを、数人で1日かけます。土の中には、色んな生物が活動しているのです。

 くまもと有機の会は、熊本県全域の生産地と標高0mから600mの生産地を産地リレーして、年間100種類以上の無農薬野菜、果物を生産しています。
 私たちは旬のものをバランスよく作り、それを消費者の皆さんにもバランスよく消費していただくといった、いたってシンプルな考えのもと活動を36年間展開して参りました。食の安全と環境保全を真剣に考え育てております野菜は、一部を除き栽培期間中、化学農薬、化学肥料、除草剤を一切使用せずに育てています。栽培する時期や、その土地にあった作物を選び、健康な土を作り育てることにより、元気な野菜になりますので結果的に農薬を使わず安全で美味しい野菜を育てることが出来ます。そのような事を理解してお付き合いいただいている皆さんがいる限り私たちも活動が続けられます。
 また、今回の原発事故の影響は、今後のエネルギー問題をはじめとする、人間の価値観を考えさせられる出来事にもなったのではないでしょうか? 有機無農薬で農作物を育てることは、除草や虫取りなども全て手作業で行なうなど、効率も悪く大変なこともたくさんありますが、そのような手間をあえてかけることが、多くの生物のバランス、人々の健康や未来の子どもたちに大切なものを残すということに繋がっていくのだと思います。そういった価値観が今後の日本復興の軸にならなくてはならないのではないでしょうか。(田中 誠)


25年の歩みを受け継いで
高槻地場農産組合

左から2人目が辻本さん

 東日本大震災と、その後の目途のたたない原発事故は、高槻の地で小さな農業を営んでいる私たち生産者にとっても衝撃的な事でした。多くの犠牲者と、今も続く被災者の困難な生活。日本という地震列島に立地された原発の恐ろしさ。助け合い、支えあう人々の暖かさと、水や食べものがいかに大切かということを。都会での生活が、食べものもエネルギーも地方に頼り、いかに危うい基盤に立っているかも。一日も早い復旧と、その際、農林、漁業がしっかり位置づけられる事を願うばかりです。
 昨年、高槻地場農産組合は、25周年の集いを持ちました。長年活動されてきた方が亡くなられたり、高齢のため退会していかれるので、昔話も含めてお話しを伺おうという集いでした。設立当初から北摂・高槻生協とともに歩んできたこと、米や野菜をつくることへの思いなどを語っていただきました。一人ひとりの顔は、その頃の生気にあふれ、当時を彷彿とさせるものでした。何よりも一人ひとりの歩みが、高槻地場農産組合を、この地の農業をつくってきたのだと思いました。
 ここ数年は組合員の減少が続き、新しく農業を始めていこうという人もいなかったのですが、昨年から今年にかけて、3名の入会がありました。よつば農業塾の卒業生、地域の中から農業をやっていこうという意欲のある方が加入され、新しい動きも出てきました。土づくりをしていこうとの動きで、熱心な組合員も加わり、共同でボカシ肥料づくりも始めました。この輪がさらに広がり、高槻地場農産組合の活動も活発にしていければと考えています。(辻本静男)


阪口明志(芦浜産直)

 錦に帰ってきて、芦浜産直の仕事を始めてから、今年で9年目になります。芦浜産直の仕事をする前は、機械設計の仕事をしていたので、帰ってきたものの、すること・見ることが初めてなことばかりで、ほとんど毎日叱られていました。
 朝、港の市場に行き、水揚げされた魚を見て、これが鮮度のよい魚、あの魚は弱っているから駄目と、目利きから教えてもらいました。肉と野菜しか切ったことがない自分には、魚の捌き方がまったく分からず、包丁の持ち方から始まり、目の前で手本を見せてもらい、自分でもやってみるのですが、見るのと実際にやるのとでは全然違い、かなり苦労して覚えました。
 今では叱られることも減りましたが、魚の世界も奥が深くまだまだ勉強しないといけないことがたくさんあります。頑張ってこの仕事を続けていきたいと思います。続けていくことで、芦浜のことをもっと知ってもらい、原発のことにも関心を持ってもらえたら良いなと思ってます。
 3月には東日本で震災があり、原発事故がありました。原発の恐ろしさを目の当たりにして、反原発・脱原発と言ってくれる人が少しでも増えてくれることを願います。錦にもまだ中部電力の芦浜原発計画の問題が消えていません。完全に計画がなくなるように、これからも負けずに頑張っていきます。


能勢賢太郎(しまなみ耕作会)

 私は去年の夏に帰郷し、家族で柑橘栽培をしています。現在、しまなみ耕作会の第二世代として、父や会のメンバーから栽培方法などを教わりながら実践の日々を送っています。
 しまなみ耕作会は尾道市にある生口島・瀬戸田町にあります。ここは1927年に日本で最初にレモン栽培を始めた所です。瀬戸田町はレモン国内生産量の約35%を生産しており、広島県全体では約7割を占めます。瀬戸内地方は柑橘栽培の適地で、様々な柑橘が栽培され『柑橘の聖地』と呼ぶ人もいるくらいです。栽培品目はみかん・レモンをはじめ、伊予柑やネーブルなどの雑柑類、その他ブラッドオレンジやベルガモットオレンジなど珍しい柑橘もたくさんありますが、全て有機肥料と有機JAS法で使用が認められた農薬のみを使用しています。レモンは出荷期間が長いので、痛みやすい季節には防腐剤を使わない代わりにオゾン水で洗い、ダンボール詰めした後にオゾンガスの注入も行なっています。皮ごと使っていただけるレモンとして喜んでいただければ、作り手冥利に尽きます。
 近年、JAS有機や特別栽培、エコファーマー基準などの農産品はスーパーでもよく見かけるようになりましたが、まだまだ少数派というのが現状です。私の住む島には約800戸の柑橘農家がいますが、減農薬栽培の農家はそのうちの約3%です。そんな背景の中でしまなみ耕作会を立ち上げ、無・省農薬栽培を続けてきた大先輩たちからしっかりと想いやノウハウを受け継いでいくのはもちろん、後継者不足や生産者の高齢化などの問題などにも取り組んでいかなくてはなりません。新米農家の私にすぐにどうにか出来るものではありませんので、地道にコツコツと努力を積み重ねていっています。
 自然に抗うのではなく、人間は自然の一部として溶け込んでいけるような、そんな農業をずっと目指していきます。