関西の水を知る 水に学ぶ

讃岐田訓(神戸大学)

第7回:まだ残っているアスベスト水道管

  みなさん、アスベスト水道管についてご存知ですか。これは戦後、戦争での鉄不足と、鋳鉄管よりはるかに安価であったため、急速に普及した水道管で、おもに、浄水場から各家庭に配水している水道本管に使われてきたものです。セメントにアスベストを20%ぐらいの割合で混ぜて、固めたもので、発ガン性が問題になっています。
アスベストの成分は繊維性の珪酸で、石綿ともよばれています。いわば、の針状ガラスです。耐火性や電気絶縁性にすぐれていることから、昔から、建材や自動車のブレーキ、電気器具など、さまざまな用途に使われてきました。
ところが、この物質を日常的に扱っている、アスベスト鉱山や製造工場の労働者に肺がんや悪性中皮腫が多発し、わが国では一九七五年から使用が禁止されています。
それではなぜ、セメントで硬く固められたものが問題になるのでしょうか。じつは、本管内壁のアスベスト繊維がボロボロと剥れて、水道水に混入してくるのです。セメントはアルカリ性で、水道水は弱酸性のものが多いのです。つまり、水道水という酸性水が、セメントというアルカリ性物質を長年かけて溶かし出し、内壁を限りなく裸のアスベストにしてしまうのです。
データはかなり古いのですが、一九七九年、昭和女子大研究グループの東京都内での調査では、水道水一リットル中に40万本〜180万本のアスベストを検出しました。
われわれは一日に、最低二リットルの水道水を摂取します。アメリカ環境保護庁(EPA)は、水道水一リットル中に30万本のアスベストが含まれているとき、10万人に一人が発ガンするリスクがあると発表しています。

消石灰を加える案も無視されて…

各自治体は国の助成を受け、取り替え工事をすすめて来ましたが、1996年現在、全国でまだ6万4000km(約12%)のアスベスト水道管が残っています。
私も10年ほど前、自分の家にきている水道本管が心配で、水道局に問い合わせたところ、案の定、アスベストでした。至急、取り替えてくれるよう頼んだんですが、一キロメートルの工事あたり一億円以上かかるとかで、「道路の下には水道のほかに、電話やら、ガスやら、下水道なんかが埋まっとる。工事でどれか掘り返しよったら、そのときがチャンスですわ」と、あっさり断られてしまいました。
水道の神様、元東京都水道局の小島貞男さんは、浄水場で少量の消石灰Ca(OH)2を加えてから給水することを提案しています。消石灰で水道水が弱アルカリ性になることと、カルシウム成分で水道管の内壁が炭酸カルシウムでコーティングできるので、アスベストも剥離してこないし、金属の腐食も止まって、赤水も出てこないというわけです。しかし、この案は無視されています。
浄水器でも微細なアスベストは完全には取れないようです。お手上げです。最後の神だのみは、お宅の水道本管がアスベストでないことを祈るのみです。

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