関西の水を知る 水に学ぶ

讃岐田訓(神戸大学)

第6回:毒物をからだにすり込んでいませんか?

 いまから十年前の一九九三年、三七年ぶりの水道水質基準の改正で、合成洗剤の主成分である陰イオン界面活性剤の許容基準が0.5ppmから0.2ppmに強化されました。
旧厚生省(いまの厚生労働省)はこの時点で、それも飲み水に関して、なぜ二・五倍も基準を厳しくしたのでしょうか。その理由は、人体毒性があることを認めざるを得なかったためと思われます。

「手あれ」ですまない合成洗剤の毒性

これらの物質が皮膚湿疹(手あれ、オムツかぶれ)や味覚障害、溶血などを起こすことはよく知られています。しかし、そのほかにもっと恐ろしい毒性がひそんでいるのです。
先天性異常に関して、有名な動物実験があります。三重大医学部解剖学教室の三上美樹教授(のちに学長)らがおこなったもので、台所用洗剤ママレモン(LASが主成分)を1000分の1にうすめて、妊娠直後のマウス(ハツカネズミ)の背中に、絵筆で一回だけ塗って、そのまま妊娠をつづけさせたところ、出産直前の胎児の22%に手足の異常、83%に出血、11%に口蓋裂(上唇が裂けている)が発生しました。もちろん、ママレモンの濃度を高くすると発生率は高くなります(日本地球社会研究所編「日本洗剤公害レポート」から引用)。
発ガンも促進します。たとえば、ニトロキノリンオキサイド(4-NQO)という胃がんを誘発する発ガン物質がありますが、この物質とLASとを混ぜた餌さをマウスに与えますと、この物質単独の場合と比べて、胃がん発生率がはるかに高くなります(柳沢文正「日本の洗剤その総点検」、績文堂出版から引用)。
また、われわれの研究室が、協同組合石けん運動連絡会(協石連)からの研究依頼で、バクテリア遺伝子の突然変異を促進させるかどうかについて調べたところ、LASをはじめとする合成系の陰イオン界面活性剤だけが促進させることをつきとめました。いろんな臓器の発ガンは、われわれのからだの細胞がもっている、ガン遺伝子やガン抑制遺伝子が突然変異をうけることによってスタートすることがわかっています。
洗剤はもともとあぶらを溶かす性質を利用しています。皮膚に塗れば、皮脂を溶かし、体内に浸み込んで、全身をめぐります。日ごろ、合成洗剤の入った台所用洗剤を原液で使っていませんか。洗髪シャンプーやボディーシャンプーを原液ですり込んでいませんか。これらには約20%の界面活性剤が含まれています。ppmの単位に換算すると、20万ppmです。いまの水道水質基準のじつに100万倍の濃度で、頭のてっぺんから足の先まで、毒物をせっせとすり込んでいるのですよっ!

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