ひこばえ通信
2011年1月号(第294号)

会員のひとりごと
胎児エコー検査を考える

☆佐藤真理子(ひこばえ通信助っ人会議)

 NHKで日本の医療問題をテーマにした番組を幾つか見ることができました。日本の予防接種は義務でないから高くて受けられないとか、最新の薬や医療機器が使えないとか。突っ込み所満載でしたが、中でも出産に対して思い入れの深い私にとって、興味深いテーマがありました。「胎児エコー検査 進歩の波紋」です。
 妊婦が受けているエコー検査の解像度が著しく向上し、心臓疾患や染色体異常などの発見率が大きく上昇し、産後すぐに治療に入ったり、お腹の中にいて治療を受けることもできるようになった。ところが、通常の健診(エコー検査)で、突然、妊婦は胎児の異常を告知されてパニックに陥り、中絶する例もあるという内容です。異常を告げられた妊婦さんが悩み抜いた上に「私を選んできてくれたんだから」と、出産したら何の異常もなかったという映像も流れていました。誤診というよりも、まだ不確実な基準ではないのでしょうか。諸外国ではエコー検査の危険性が問題視されているらしいのに、それには一切触れられていませんでした。主なやり取りとしては「障害者」の権限、存在意義の話でしたが、いろんな意味で問題の多いテーマでした。
 ちなみに日本の法律では出生前診断による中絶は認められていませんが、40を過ぎての妊娠の場合、羊水検査を勧められるようで、最近、ママ友でもウン十万円かけてやっていました。検査結果が出るまでは心配で仕方なかったようです。いろんな意味でますます生きにくい世の中になっていくのだなぁと思いました。


『いのちのために、いのちをかけよ』
吉村 正 著・地湧社・2010年刊・46判・248頁・1785円
■評者:堀井繁樹(編集委員/近江産直)

 爽快感! この本を一気読みしてそれを感じた。気持ちいい! と言いかえてもいいかもしれない。美味しい物を食べているとき、親しい友人と酒を酌み交わすとき、きれいな夕日や夜景に見とれるとき、大好きな人のそばにいるとき…それらと同じように、これが理性的感覚ではなく、感情的感性でとらえることができる書物だから気持ちいいのだと思う。魂の奥底ではわかっていたけれども、日々の暮らしの中で忘れていた大切なものを思いださせてもらったような読後感。男の僕には残念ながら経験できない「お産」の神秘と偉大さにただただ頭を垂れたくなるような気持ちにならせてもらったことを心地良く感じている。
 著者の吉村先生は50年の産科医人生を通して壮大な旅をしてこられたのだ。いうまでもなくそれは横の水平移動ではなく、縦の登りつめるという旅。一つのことにいのちをかけて取組んできた向上の旅だった。この本に書かれていることが全て真理であるかどうかはわからない。でも、吉村先生が人生をかけて体得された到達点であることに間違いはない。僕にとって一人の男として深く考えさせられた一冊でもあった。
 本との出合いは人との出会いに似ている。出会う人によって様々な学びや気付きがあり、影響を受けて私たちは生きている。女性のみならず男性にも広く読んでもらいたい一冊だ。あなたの心、魂にこびりついていたなにかがきれいに剥がれるかもしれない。