ひこばえ通信
2011年1月号(第294号)

くらしからの政治
下前幸一(東大阪産直)

映画「1985年 花であること」

 この映画を監督・制作した金成日(キム・ソンイル)さんと主人公の徐翠珍(ジョ・スイチン)さんは、1985年、時期を同じくして、外国人登録法の指紋押捺を拒否し、翌年逮捕された。
 金成日さんは在日朝鮮人の2世。徐翠珍さんは在日中国人の2世。法的な処罰も覚悟して、指紋押捺を拒否した彼らの胸の内には、どのような気持ちが流れ、わだかまり、凝固し、あるいは沸騰していただろう。それは私たち日本人とその社会に対して、どのような問いを投げかけたのだろう。私たちは、彼らの問いかけを果たして受け止めてきたのだろうか。
 映画は金成日さん自らがインタビューする形で、徐翠珍さんの生い立ちから現在までの半生をたどっていく。彼女は1947年生まれ、1930年代に渡日した上海出身の両親のもとに神戸で生まれた。子供時代、両親のこと。神戸中華同文学校のこと。保育所での就職差別に対する闘い、指紋押捺拒否、裁判、靖国訴訟、9条を守る取り組みなど、厳しい状況の中で、くじけそうになりつつも、しなやかに、したたかに生きている一人の在日中国人女性の等身大の姿を描きだす。
 徐さんや金さんらの闘いによって、外国人登録法の指紋押捺は2000年に廃止された。しかし07年にはテロ対策として、徐さんら一般永住者を含む外国人を対象に、入国審査での指紋採取が始まった。台湾在住の高齢の友人に会うために、意を決して出国し、そして帰国した徐翠珍さん。入国審査官とのやりとり。「どうしても嫌言うたら?」「帰ってもらう」「帰るって、私の国ここですよ」くやしさをかみつぶすように押捺する徐さん。日本の今、現在。私たちの暮らしのすぐ傍らの光景だ。
 映画「1985年 花であること」は現在、各地で自主上映されています。金成日さんが尼崎市で営む喫茶「どるめん」のホームページに日程が掲載されています。ぜひ一度ご覧ください。
http://www.geocities.jp/hanran9/dorumen.htm(喫茶「どるめん」)