ひこばえ通信
2011年1月号(第294号)

『カフェ・ティモール』産地と交流
離れていても想いはひとつ

伊藤淳子(特定非営利活動法人パルシック東ティモール事務所)

 地球儀を日本から真南にたどっていくと、オーストラリア大陸の少し手前に『カフェ・ティモール』の産地、東ティモール民主共和国があります。
 とても小さい島国で、総面積は長野県ほど、人口はたった100万人です。人口の8割が農家で、お米やトウモロコシ、イモ類、豆類、野菜類を栽培し、牛や馬、ヤギ、豚、鶏などの家畜を飼育して生活しています。コーヒーは、この国の輸出品の9割以上を占める、ほぼ唯一の輸出農作物です。


今年からコカマウに加入したハヒタリ集落のメンバーたち

フェアトレードの試みに協力

 パルシックは東ティモールで2002年から、マウベシコーヒー生産者協同組合「コカマウ」を支援してきました。首都ディリから車で2時間半、山道を75キロメートル登ったところにあるマウベシは、標高1400mで南国とは思えないほど朝晩冷え込み、美味しいコーヒーを栽培する条件に恵まれています。
 私たちは、コーヒー生産者が自分たちの手で品質のよいコーヒーを生産・加工するための技術や資材を提供し、日本の市場へフェアトレードで出荷する試みに協力しています。売上の一部は組合資金に積み立てられ、2008年には2万ドルに貯まった自己資金で組合運営を開始しました。現在271世帯が加入し、年間35トンのコーヒー生豆を生産しています。

植民地―軍事占領の歴史を超えて

 ポルトガル植民地下で450年、インドネシア軍事占領下で24年という支配され続けた歴史を経て2002年にようやく独立を果たした東ティモールでは、人びとが自由に自分たちの意思で何かを始め、作り上げていくという経験は始まったばかりです。
 コーヒーも、品質を問われないために劣化、老朽化が進み、安価で買い叩かれていました。自分たちの家の近くでコーヒーの加工ができ、良い品質のコーヒーを生産することで、より良い市場にアクセスできるという点が求心力となってコカマウに人が集まっています。そして現在、集まってきた人たちとともに組合を「運営」していくことが大きな課題です。
 東ティモールの憲法には、経済発展の基盤として公的セクター、民間セクターと並んで組合セクターが掲げられています。政府内に協同組合局が設置され、局長以下32名の職員が組合普及、発展のために働いています。
 しかしながら、コカマウが直面する現場での課題と政府からの働きかけは往々にしてかみ合いません。パルシックは今年11月、日本における協同組合活動と政府の果たす役割や課題が参考になればと、協同組合局長ボニファシオ・コレイア氏を日本に招きました。
 関西よつ葉連絡会のみなさまにもお会いする機会を得、物流センターやよつば農産、能勢農場を見学させていただきました。よつ葉の現場で出会った人びとに勇気づけられ、コレイア氏は次のように語っていました。
 「アジアの先進国日本にも、こうした活動があるということを知って大きなインスピレーションを得ました。政府の役人として政策はもちろん大事だが、わたし個人の全人生をかけて成し遂げたいと思っていることはみなさんと同じです」。
 日本と東ティモール、遠く離れていても心はひとつだと思える出会いでした。