ひこばえ通信
2010年12月号(第293号)

野良仕事のひとりごと
TPPって
新農業研究会 今井 正一

 10月初め、首相がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について検討するよう指示したと報道されていた。TPPには米国とオーストラリア等も含まれる。問題はこの国々が完全な貿易自由化推進の立場をとっていることだ。
 今や世界は人や物の交流が盛んになり生活の向上に役立っていることは言うまでもない。しかし、行き過ぎた自由化は立場によって甚大な影響を受ける。今回問題になっているのは、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)では重要な品目は例外が認められるのに対して、一切妥協が認められないということである。これにより農業が壊滅的な影響を受けるとされている。試算によると北海道では5563億円の減収になり畑作などが壊滅、関連産業を含めると2兆円超という。農水省の試算でもGDP(国内総生産)が7兆9000億円減になるとしている。問題はこの影響が関連産業を含めて、地方経済を直撃するということだ。当初、賛成に回っていた経産省も、金融・郵貯の自由化ではデメリットもあると慎重な姿勢に転じた。
 今年の米の価格が低迷している。前述の貿易自由化推進のために「戸別所得補償」制度を立ち上げたといわれるが、在庫があるのと補償のせいで価格下げ圧力が加わったといわれている。今年産の東北地方は作況が100の平年作というが、現場では天候不順で収量が少なく、品質も低下しこの価格では補償が出ても赤字という声が聞かれる。
 昨今の世界の動きは凋落する超大国と上昇気流に乗る大国のはざまで、右往左往する島国の姿が浮かび上がる。グローバル化万能論の罠にはまり込んで、かけがえのない生物や種の絶滅、環境破壊、資源やエネルギーの枯渇等々、負の側面を忘れてはならない。もしTPPに加盟すれば日本の食料自給率は更に低下し、農林水産業は壊滅的な影響を受ける。しかも金融や郵貯も食い物にされる恐れもあるのではないかとみている。
 外務省主導で外圧のにおいもするが、将来に禍根を残さない、しっかりした対応をしてもらいたい。先の漁船衝突事件では弱腰外交を世界にさらした。短期間にころころ変わる政権、この国を本気で守る気骨のある責任者が出てきて欲しいが。