ひこばえ通信
2010年5月号(第286号)

めざせ! 半歩先〜命つむぐために〜
第44回:台所で育つ子どもたち

渡辺美穂(フリーライター・西日本新聞社『食卓の向こう側』取材班)

 先月、「子どもたちを台所に立たせることは日本の財産になる!」と書かせていただきました。「分かるけど、子どもを台所で遊ばせる@]裕はないんだよなあ」という方もいたでしょうね。そこに、よつ葉会員さんからある実践報告が届きました。手元にとどめてはもったいないので、紹介させてもらいます。
 その方は、石井由紀子さんと村上三保子さんという2人のママさん。大阪府茨木市を拠点に2歳から就学前が対象の親子料理教室「こどもキッチン」(mixiのコミュニティ:http://mixi.jp/view_community.pl?id=4001832)を主宰しているとのこと。4月の献立は、こいのぼりのお寿司、鯛のうしお汁、かしわ餅。ちょっと様子を聞いてみましょう。
 「環境さえ整えて真摯に接すると、尻込みしていた2歳児でも想像よりも早く環境に溶け込み、台所作業を楽しみます。また最後までやり遂げます。当初は『その場にいられればOK』としていたのですが、『見ているだけ』の子は今のところ1人もいません」
 「教室では毎回、新しい発見がいっぱいです。作業に没頭する姿に感動させられますし、小さな声で『これ、楽しいね!』とつぶやくシーンにも出会います。大人にとって仕事は『義務』ですが、子どもにとっては、自分を成長させるために必要なことであり、『楽しい!』『どうしてもやりたい!』ことなのですよね」
 小さな子どもが台所に立つ際は、気を付けるべきことを上手に伝える技も大切。夫婦だけで挑戦するのが不安な方にとって、こんな仲間がいると心強いですね。また、普通の親子料理教室と違って面白いのが、「こどもキッチン@HOME」という取り組み。自宅の台所で子どもが作業するためのノウハウをmixiなどで交換しようという試みです。
 こうした当事者同士の実践の強みは、慣れた人がいずれ、台所デビュー前の親子をサポートする側に立てるようになること。草の根的な広がりは、こんな育ち合いの場から始まるのかもしれません。
 石井さんと村上さんがこどもキッチンを続ける裏には、「一連の作業を通じて『最後まで自分でやり遂げた』という事実が子どもに自信を与える。自信は自立へつながる」という思いもあります。実は、全国約600校近くが実践する「子どもが作る『弁当の日』」という取り組みも、まったく同じ思いで広まっています。実践校では、誰かの役に立つことを喜べる人、周囲に感謝する人、自他共に認め合える人が育っています。
 家事を手伝うこともなく、自信を得る機会を失った現代の子どもたち。一人前になろうとする子どもをサポートする大人の輪の広がりは、本質的に豊かな暮らしを叶える楽しい「世直し」に映ります。