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手づくり弁当の力!
佐藤剛史(九州大学大学院農学研究院助教) 12月号の「昼ごはん(弁当)」アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。今年の『ひこばえ通信』は、このアンケートへの回答も紹介させていただきながら、昼ごはんを中心に食のあり方を考えていきます。今月の1面をお願いした佐藤剛士さんは、小学生に弁当づくりを体験させる「弁当の日」などの実践にも精力的に取り組んでおられる研究者です。また、先月号8面「めざせ! 半歩先」によると、フランスでもよく売れているという『すごい弁当力!』などの著者でもあります。弁当をつくることによるいろんな良い変化について、いっしょに考えてみませんか。(編集部・下村) |
お弁当を作れなくても、何も困ることはありません。便利な世の中です。安い弁当を探せば250円弁当がありますし、品質にこだわれば「安全・安心、無添加、バランスばっちり、有機農産物使用、高級弁当」もデパ地下に売っています。子どもの遠足にコンビニ弁当を持たせ、運動会に仕出し弁当を注文する家庭も増えてきました。 食べる分には、何も困りません。でも、食べる人が、その弁当にあったかさや、やさしさを感じることができるかどうか。それが問題です。 ある男子大学生の作文です。 私の家は農家で、父も母も忙しかった。毎日、やらなければならない作業がある。だから、野球の試合などは全く見に来てくれなかった。 ただ、小学校の運動会だけは毎年見に来てくれていた。 前日、母が、「明日の運動会の弁当の中身、何がいい?」と聞いてきた。私は、当時、オムライスが大好きで、「オムライスがあるなら何でもいい」と適当に答えていた。 当日、母は早起きして弁当の準備、私が学校に行ってからも弁当の準備。 学校に来たのは、運動会が始まるギリギリだった。 「いつくるのか、いつくるのか」とヤキモキしながら待っていたことを思い出す。 午前中、私の運動会の成績はあまりよくなく、落ち込んで母たちのいる場所に行った。 弁当箱が開けられると、そこには、大好きなオムライスの上にケチャップで「ガンバレ」って書いてあった。 オムライスを食べてからの午後の成績は、少しだけよくなった。 誰にもこんな思い出があるはずです。運動会のお弁当、遠足のお弁当、高校のときの毎日のお弁当、お母さんが作ってくれたお弁当、家族で食べたお弁当。とってもあったかくてやさしい思い出として胸に刻まれているはずです。 |
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『すごい弁当力!』 −子どもが変わる、家族が変わる、社会が変わる 佐藤 剛史 著 発行所:五月書房 発効日:2009年8月 価格:1500円+税 |