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2010年2月号(第283号)

手づくり弁当の力!
事業仕分け雑感
くらしからの政治
野良仕事のひとりごと
ぐるーぷ自己紹介
会員のひとりごと/お弁当に華を!
おたより掲示板
ロゼーラ(ハイビスカスティ)の生産者を訪ねて
うまい話まずい話
共済だより
みんなで考えよう昼ごはん/
1/18小野原店リニューアルオープン!
めざせ! 半歩先〜命つむぐために〜
ちゃぶ台ラプソディー、編集後記



手づくり弁当の力!
佐藤剛史(九州大学大学院農学研究院助教)

 12月号の「昼ごはん(弁当)」アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。今年の『ひこばえ通信』は、このアンケートへの回答も紹介させていただきながら、昼ごはんを中心に食のあり方を考えていきます。今月の1面をお願いした佐藤剛士さんは、小学生に弁当づくりを体験させる「弁当の日」などの実践にも精力的に取り組んでおられる研究者です。また、先月号8面「めざせ! 半歩先」によると、フランスでもよく売れているという『すごい弁当力!』などの著者でもあります。弁当をつくることによるいろんな良い変化について、いっしょに考えてみませんか。(編集部・下村)



▲自分で作った弁当を手に笑顔の子どもたち
 お弁当、作っていますか?作れますか?
 お弁当を作れなくても、何も困ることはありません。便利な世の中です。安い弁当を探せば250円弁当がありますし、品質にこだわれば「安全・安心、無添加、バランスばっちり、有機農産物使用、高級弁当」もデパ地下に売っています。子どもの遠足にコンビニ弁当を持たせ、運動会に仕出し弁当を注文する家庭も増えてきました。
 食べる分には、何も困りません。でも、食べる人が、その弁当にあったかさや、やさしさを感じることができるかどうか。それが問題です。
 ある男子大学生の作文です。
 
 私の家は農家で、父も母も忙しかった。毎日、やらなければならない作業がある。だから、野球の試合などは全く見に来てくれなかった。
 ただ、小学校の運動会だけは毎年見に来てくれていた。
 前日、母が、「明日の運動会の弁当の中身、何がいい?」と聞いてきた。私は、当時、オムライスが大好きで、「オムライスがあるなら何でもいい」と適当に答えていた。
 当日、母は早起きして弁当の準備、私が学校に行ってからも弁当の準備。
 学校に来たのは、運動会が始まるギリギリだった。
 「いつくるのか、いつくるのか」とヤキモキしながら待っていたことを思い出す。
 午前中、私の運動会の成績はあまりよくなく、落ち込んで母たちのいる場所に行った。
 弁当箱が開けられると、そこには、大好きなオムライスの上にケチャップで「ガンバレ」って書いてあった。
 オムライスを食べてからの午後の成績は、少しだけよくなった。

 誰にもこんな思い出があるはずです。運動会のお弁当、遠足のお弁当、高校のときの毎日のお弁当、お母さんが作ってくれたお弁当、家族で食べたお弁当。とってもあったかくてやさしい思い出として胸に刻まれているはずです。
 なぜ、手作りのお弁当に、私たちはあたたかさや、やさしさを感じるかというと、それは作る人が、食べる人に喜んでもらえるように、時間と手間をかけるからです。それが分かるからです。
 お弁当には、作った人の命が詰め込まれています。たとえば、80歳で亡くなる人は、80年間という時間がその人の命ということになります。命は時間です。お弁当作りに1時間を費やしたならば、その人の1時間という命がお弁当箱には詰め込まれていることになります。
 それは「あなたのお弁当には、私の1時間の命を費やす価値がある」ということです。作った人のメッセージです。だから私たちは、手作り弁当に愛情を感じるのです。
 お弁当を作れるということは、人に、あったかさや、やさしさを与えることができる、愛情を注ぐことのできる力があるということです。
 そして、食を通じて愛情をたっぷりと受け止めた子どもは、あたたかくてやさしい大人になり、親になったとき、その子にも同じように愛情をたっぷり食べさせるはず。
 弁当作りを通じて、そんなあたたかさとやさしさが、世の中に広がっていくことを願っています。


『すごい弁当力!』
−子どもが変わる、家族が変わる、社会が変わる
佐藤 剛史 著
発行所:五月書房
発効日:2009年8月
価格:1500円+税