ひこばえ通信
2009年10月号(第279号)


第4回:“疲れた時に甘いモノ”のウソ

 先日、面白いテレビ番組を見ました。死の危険に直面した時に脳が驚くような働きをするのを、何人もの実体験をもとに再構成したドキュメンタリーです。イギリスのBBCが制作したものをNHKで放送していました。なかでも面白かったのは海を、救命ボートで漂流した人の体験談です。食べものは魚しかありませんから獲って食べ続けました。何日もするうちに、魚の身よりも内臓に対して食欲を感じるようになったそうです。身を食べるだけでは栄養が偏りますから、多様な栄養を体が求め、脳が命令したという説明でした。
 このことから2つのことがわかります。前回、魚の皮と美肌の関係について書きましたが、内臓も骨も血液もビタミンやミネラルをはじめ、様々な栄養素の宝庫です。魚食が他の肉食よりもすぐれている点は、全体を食べることで、とても栄養バランスがいいという点です。だから、マグロのような大きな魚のある部分だけを、しかも高いお金を払って食べるのは、栄養学的にはバカげたことです。サンマの内臓をいっしょに食べたり、イカの塩辛などは賢いことです。
 もうひとつ。食欲は脳の一番奥の視床部が関係しているそうで、本能といえるような働きだと思います。例えば疲れた時に甘い物が欲しくなるのもそうでしょう。糖分は脳も含めて体のエネルギー源です。ところが、ここに現代人の不幸があります。甘い物というとスイーツを連想して「これは別腹」と食べます。体が求めている甘い物は本来は果物なんだそうで、糖分だけでなく、それを効率よくエネルギーに変えてくれるビタミンやミネラルが豊富です。柿が赤くなると医者が青くなるのもそのためです。日本人が砂糖を食べだしたのは江戸時代からで、しかもぜいたく品で、誰もが食べられたわけではありません。つい最近までそうでした。本能は果物を食べたがっているのに、スイーツを与えたのでは体も脳も喜びません。怒っているかも知れません。
 ゴリラは時々、土を食べるそうです。これもミネラルが不足した時に、体が求めるのかも知れません。人間が必要とするミネラルももともとは土の中にあったものを植物(野菜や果物)が体に取り込み、それをいただいているわけです。ただし、野菜や果物は人間のためにミネラルを吸収しているわけではありません。自分たちが生き、子孫を残すためです。たとえば鉄は人間にとって血液を作るのに絶対に必要なミネラルですが、植物にとっても葉緑素を作る、非常に大事なミネラルです。だから、ホウレン草や小松菜などを食べれば鉄が不足することはありません。ところが、野菜を食べなくなっている現代人はミネラル不足になっています。ゴリラの方がずっと賢いと言えます。