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2009年10月号(第279号)

なぜ「地場と旬」なのか―栄養学の観点から
ミネラル不足の現代食生活
水俣現地職員研修に参加して
国は何を学んできたのか?
くらしからの政治
野良仕事のひとりごと
埼玉から 生産者自己紹介
ぐるーぷ自己紹介
会員のひとりごと/旬の食材 食べ方と保存方法
おたより掲示板/自然館富田店リニューアルオープン!!
山岡志保さん紅茶教室
うまい話まずい話
共済だより
わが家の朝ごはん
連載 めざせ!半歩先 〜命つむぐために〜
ちゃぶ台ラプソディー、編集後記



なぜ「地場と旬」なのか―栄養学の観点から
ミネラル不足の現代食生活
中尾慶子(NPO法人大地といのちの会理事/
聖和女子学院中高等学校講師)

 現代の食生活ではミネラルやビタミンが不足しがちだと言われます。ジャンクフードばかり食べていればそれも当然。ですが野菜も食べているから大丈夫、とも言い切れないというのが今回のお話。化学肥料や農薬を多用して栽培された作物には、本来含まれているとされる栄養素が不足しているのです。中尾さんが示してくださったデータからもその差は歴然。やはり基本は、地元の旬の作物を食べることなんですね。ミネラル不足については「うまい話まずい話」もあわせてお読みください。(編集部・下村)


 豊かな時代を迎え、豊富な食料に囲まれているのに、増える一方の生活習慣病やガン、うなぎ昇りの医療費…食べても食べても健康になれない日本人。食べるほどに不健康にさえなっていく現代の食生活。その原因はいったいどこにあるのでしょう。
 高校現場で、生徒たちの低体温や便秘の現状に悩むと同時に、免疫力の低下と代謝の低さに大きな疑問を感じていました。そんな時、出会ったのが有機農業の世界でした。生ごみなど有機物を土に混ぜ「土ごと発酵」。微生物いっぱいの土で野菜を育てると、虫にも病気にも強く、色が鮮やかで見た目も元気、その上、香りは強いし食べると味が濃い!? 栄養素を調べてみるとビタミンもずば抜けて入っている!? そんな野菜を簡単に生徒たちが育てることができました。(グラフ1)

【グラフ1】
 戦後、野菜のミネラル分は軒並み減少しており、ピーマンの栄養素の変化を見ていただいて判るように3分の1から5分の1。ハウスでの促成栽培が進んだ結果、ピーマンは緑黄色野菜の分類に入れないほどミネラルが激減しています(グラフ2)。

【グラフ2】
多用化される化学肥料は水によく溶け、野菜は化学肥料と共に水をよく吸い、水太りします。大きいのにミネラルは少なく水っぽく味も香りも薄まります。一方、土壌微生物の生み出す生理活性物質に支えられ、抗酸化力の強い野菜は、切ってもなかなか腐りません(写真1)。

【写真1】
さらに、弱い野菜は、老化ガスを出す量が増え、虫を呼ぶこととなります。そのため、農薬の使用量が増え、戦後、化学肥料と農薬はセットで使われてきました。
 実は、夏のピーマンは今でも緑黄色野菜です。先程のグラフは1年間を平均した数値。冬にハウス栽培されるピーマンが、栄養価も低く農薬も多くなります。
 しかし、農家としては旬の野菜を無農薬で育てても安くお金にならず、旬を外し季節外れの野菜を育て高値で売る努力をします。旬の大根が10円以下だったりして畑に廃棄される光景など記憶にあると思います。結局、消費者がこうした現状を作りだしたとも言えそうです。土づくりに手間暇かけた旬の有機野菜は栄養価も抗酸化力も強く、安心して皮ごと生長点ごと食べられます。適正な価格で消費者が買い支える必要があります。

地元の旬の作物を

 夏野菜にはカリウムが多く、利尿作用を促し、体の熱を逃がしやすくしてくれます。冬野菜の根菜類にはナトリウムが多く、細胞を引き締め、熱を逃がしにくくしてくれます。私たちは自分が住む気候の中で、今、元気な作物を食べることによって体の微調整を行っています。そのため、地元の旬の作物を食べることが健康のためにも必要なのです。
 さて、さらにミネラル不足を加速させているのが家庭での調理方法、特にダシや調味料。ミネラル豊富なダシはグルタミン酸ナトリウムの粉末ですまされ、発酵調味料も麹菌が生み出してきた多くの酵素により甘味・旨味・香り・色を生み出してきましたが、それらを化学物質に置き換え安値で売られるものが市場の8割を占めるまでになってしまいました。
 最後のとどめが加工食品の現状。水煮など加工して売られるものが増えてきました。特に食中毒予防が強化されたここ10年では加工するたびに洗浄と消毒殺菌が繰り返されています。その結果、水溶性の必須微量元素は皆無…。千切りにしたキャベツを30分水に浸していただけでも(グラフ3)のように減ってしまうミネラル。


【グラフ3】
煮汁を捨て何度も洗われて透明な水に何日も浸かっている野菜の中身は想像がつきます。素材から手作りすることがいかに価値あることか再認識できます。
 私たちの体に無くてはならないミネラルが食材そのものから減り、さらに調理の段階で水溶性微量元素を失い、皮を剥き真ん中だけを食べることで抗酸化物質も捨てていることになります。さらには、芯や新芽や花など野菜の生長点を食べる習慣を忘れてしまっています。実は皮や生長点にこそ体を守る成分ファイトケミカルが集中しているのです。丸ごと調理を心がけてみてください。
 薬やサプリメントは増える一方ですが不健康な人は一向に減りません。その根底には土づくり・食生活のゆがみが見えています。土を良くすれば野菜は自分の力で見事に成長します。食を変えれば自らの力で健康を手にすることができます。各地の学校で、たった1カ月!取り組んでもらっただけでも、子どもたちの低体温や便秘、体調不良が改善されていきます。もう一度、日々の食卓を見直してみる必要がありそうです。