ひこばえ通信
2009年7月号(第276号)


第1回:味の素のウソ

 明治42(1909)年5月20日、味の素が売り出されました。それからちょうど100年になります。
 東京帝大の池田菊苗教授が昆布だしのうま味がグルタミン酸によるものとつきとめました。グルタミン酸は人間の体(タンパク質)を作るのに必要な20種類のアミノ酸のうちのひとつで、しかも多用されているひとつです。日本人はグルタミン酸がうま味としてだけでなく、体にとっても大切なものだと気がついていたかも知れません。
 この発見を化学調味料という製品へと結びつけたのが鈴木三郎助さん、味の素の創業者です。それまでは海藻から薬を作っていたそうですから、昆布からグルタミン酸を抽出するのはそんなにむずかしいことではなかったかも知れません。ただし、おだし(水溶液)の状態ではビン詰にしてもかさばるし、何よりも日持ちがしませんから、とても売れません。そこで、グルタミン酸をナトリウムと反応させて結晶化させることを考えつきました。つまりグルタミン酸ソーダ=味の素の誕生です。40年ほど前にはどこの食卓にも白い顆粒状の味の素の小ビンがあって、おつけものにサッサッとふりかけたり、冷や奴にふりかけたりとしたものです。ナトリウムと反応させることで初めて、グルタミン酸が安定し、コンパクトになり扱いやすい商品となったわけです。「化学」調味料と言われる由縁です。
 さて、味の素はウソです。味の素はグルタミン酸そのものではありません。あくまでもグルタミン酸+ナトリウムです。水に触れればすぐにグルタミン酸とナトリウムに分解しますから、うま味として作用するのは事実です。ところが、いっしょに溶け出すナトリウムがやっかいなシロモノです。決して無味ではなくて、うま味のあとにやってくる、あの後味の悪さがナトリウムの味だと言っていいでしょう。塩化ナトリウム100%の精製塩に感じるあの後味です。味の方は単に好みの問題かも知れませんが、ナトリウムが人間の体に重大な影響を与えることを忘れてはいけません。
 一般に高血圧の予防として「塩分の取り過ぎに気をつけて」と言われますが、これは厳密に言うと「ナトリウムの取り過ぎに注意」の意味です。せっかく塩分を控え目にしても、味の素でナトリウムを取れば意味がありません。いちど、近くの王将に行って調理人がよく見えるカウンターに座ってみたら、一皿の料理にどれほどの味の素が使われるかよくわかります。また、鈴木三郎助さんがナトリウムと反応させることを考えついたように、その後に開発された種々の食品添加物の多くがソーダ塩の形で使われていますから、こちらからもナトリウムを摂取することになります。
 高血圧ばかりでなく、ナトリウムの取り過ぎは、亜鉛だとか、カルシウム、カリウム、マグネシウムなど人間に必要なミネラル(必須微量元素)の働きを邪魔する恐れもあります。ただでさえ、野菜や小魚を食べなくなって、それらのミネラルが不足気味だというのに困った事です。