ひこばえ通信
2008年9月号(第266号)

共済だより 医療福祉の現場から
「就労支援」って何だ?

 今回は精神障がい者の就労問題についてです。現在、障害者福祉関連の施策において、重点的に予算がつけられているのが「就労支援」です。講演会やシンポジウムなどが、あちらこちらで頻繁に行われていますし、06年に施行された障害者自立支援法の中でも「就労支援事業」や「就労移行事業」なるものが事業として類型化されています。
 精神科の病院や診療所などでも、就労支援に関するプログラムなどの取り組みが行われるようになってきました。
●「就労支援」の中身
 その中身はというと、相談、生活支援から、障がい者を「受け入れてくれる」事業所を見つけたり、仕事を斡旋することなどなど。障がい者と一緒に「ジョブコーチ」として慣れるまで職場に付き添う支援もあります。また、履歴書の書き方や面接の受け方。就労のための「模擬職場」での「訓練」や「職業適性検査」を受けることから、ハローワークへの同伴などなど、各所で多岐に行われています。
●障がい者の就労への障害
 障がい者が仕事につくための障害(障害とは自分の体など内側にあるのではなく外側・社会の側にこそ存在します)は、非常に厳しいものがあります。差別や偏見、無理解のなかで実際に就職し、仕事を継続していくことは非常に困難です。雇用形態も非正規雇用がほとんどです。
 「就労先」である企業が生き残りをかけて「生産性」を上げることに躍起になっている中では、「生産性のあがらない人」は就労支援の対象から外されることになりかねません。そのため、「就労支援」が「健常者のペースに近づける」ように訓練的なものになりがちです。それは、能力主義や競争原理の社会に就労支援することに他なりません。
 実際に多くの福祉事業所で「一般就労」が目指され、それが困難な場合には「福祉的就労」(作業所などへの就労)へつなぐことがなされています。それはこの社会では当然とされる「能力主義」的な価値を反映したものといえます。
●働けない人への支援・働かない人への支援・働きたくない人への支援
 障がい者への就労支援を行う一方で、「できないこと」に価値を置き、「生産性のあがらない人」が、安心して暮らしていけるような世の中のあり方を考える必要性を感じます。
 世の中には、働けない人も、働かない人も、働きたくない人もいます。「就労支援」が能力主義や生産性で、障がい者を分断するようなことにならないようにすべきです。「できないこと」を保障することが、障がい者の生存権を守ることにつながると思います。
 「生産性のあがらない人」が排除されるような社会の中での就労支援は、病気の再発支援になりかねません。過労死やサービス残業が当たり前の世の中ではなく、安心して休める社会が必要です。就労支援がむなしいものにならないように。
(光愛病院・横江邦彦)