ひこばえ通信
2008年9月号(第266号)

野良仕事のひとりごと
ピザを焼く
赤石果樹出荷組合 平澤充人

 私が住む集落で共同の移動式の窯を作った。集落のおまつりやリンゴ狩りやよつ葉の産地交流などのときに、薪を焚いて、その窯でピザを焼く。直径38cm。取り出すと大きさに感嘆して、みんな「おーっ」と声を挙げる。アツアツをほおばると実に旨い。しかし、しょせんは自己流でつくるピザ、自己満足のピザだ。本当の味はどんなものだろうかと、街のピザ専門店へ入った。旨くない! おれたちのほうが数段上だ、と自信になった。
 ピザの生地は小麦粉にイースト菌を混ぜて発酵させる。それを平らに延ばして上にチーズ、ハム、トマト、トウモロコシ、ピーマンなどの野菜をのせて250℃で焼く。具の種類は多いほうが美味しい。チーズをケチると旨くない。縁がちょっと焦げるくらいに焼くのが良い、などなど焼き上げのノウハウは蓄積されてきたのだが、このところ材料費が高騰してきた。特にチーズは値上がりが大きい。ハムも小麦粉もピザソースも高くなった。
 たまに作るピザの材料はまだいい。農業関連の値上がりがすごい。ガソリンは50%強、肥料は50〜100%の値上がり、ダンボールもパックも各種資材も輸送費もみんな値上がり。ほとんどのものが原料が外国産で、しかも石油関連だからしょうがないのか。「食糧自給率」ではなくて「資材自給率」というのはどのくらいなのだろう。
 酪農をやっている甥のところでは餌代が20%〜30%上がったという。「オレのところはまだいいのな」と甥。「乳価をちょっとは上げてくれたでな。肉牛の農家なんて餌は上がる、肉の値段は下がるで、泣いとるに」。7月、全国の漁業者が「油の値上がりで漁ができない」と一日ストライキをやった。わかるなあ、その気持ち。
 ものはおしなべて安い方がいいに決まっている。でも、再生産ができないような状況では、やがては生産そのものが減ることになる。私、66歳になる。温暖化は進むし、国の借金は減らないし、犯罪は多いしで、「トシをとると心配ゴトが増えるなあ」と、ブツブツ言いながらピザをほおばる。