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2008年9月号(第266号)

私たちが魚を食べ続けるためには
「三里塚物産」訪問レポート
暮らしからの政治(49)
野良仕事のひとりごと
山形から 生産者自己紹介
会員レポート/お店巡り
farm(生活雑貨)&ふるさと広場曽根店
会員のひとりごと 子連れのおでかけ
これだけは手作り
おたより掲示板
ぐるーぷ自己紹介 関西NGO大学
共済だより 医療福祉の現場から
こんなんしてます
大豆くらぶ生育日誌
めざせ!半歩先 〜命つむぐために〜
私的快適?日記(7)、編集後記



 
物価高騰―迫られる生活の見直し(水産編)
鷲尾圭司(京都精華大学)

私たちが魚を食べ続けるためには
まともなものを、ほどほどに―「旬産旬味」に立ち返ろう

 日本はかつて世界一の水産大国でした。ところが今では漁業生産量はピーク時の半分、漁業者は5分の1、消費量の半分近くを輸入に頼っています。しかも近年は日本の輸入業者が買い負けし、その輸入さえおぼつかなくなってきました。そこに押し寄せたのが「出漁すればするほど赤字」の燃料高騰です。政府が燃料費補填を決定し「3割の漁師が廃業しかねない」事態は避けられたものの、他方では乱獲による資源の枯渇も懸念されています。そんな中で、旬の魚とともにあった私たちの食文化や、次世代に残すべき共有財産である海をどう守っていくのか。05年まで本紙に「海からの便り」を連載してくださっていた鷲尾圭司さんに暮らしの視点から提起していただきました。(編集部・下村)



▲一斉休漁を報じる新聞記事
(2008.7.15 朝日新聞夕刊)
 去る7月15日は日本の漁業史上はじめての全国一斉休漁日となった。ご存知の通りの燃料油代など石油製品の急騰で、魚を獲ってきても採算があわなくなるところにまで追い込まれた漁業者たちの窮余の策だった。政府もねじれ国会で足腰が弱っているので、思いもしなかった燃料費の補填を政策決定したほどだ。

採算割れ・販売不振 
追い込まれる漁業

 漁業が追い込まれているのは燃料代などの経費だけではない。輸入食料品に押されて、水産物の販売自身が不振を極めているからだ。いや、人によっては回転寿司の盛況や、グルメなマグロのブーム、スーパーの刺身コーナーの賑わいなどあって、魚離れなんてないように感じておられる方もいるかも知れない。しかし、そんな賑わう風景の中に問題は潜んでいる。
 原稿を書いているお盆休み、中国ではオリンピックが華やかに開催されている。京都の食を彩るグジ(アマダイ)の塩焼きを求めに行って、戸惑った。比較的安く買えた東シナ海ものが消えている。残っていたのは、幸か不幸か高価な若狭グジだった。一切れ千円。いつもは半値で食べられたのに…。
 そうです、東シナ海産は全て中国に買い取られ、オリンピックが終るまで日本には入って来なくなったのだ。中国の経済発展は目覚しいものがあり、それまで中国の人びとにとって高嶺の花だった海産魚が買い求められるようになり、五輪特需もあって魚は投機の対象になったわけだ。

便利さの代わりに何を失ったのか

 投機の対象にならないものは、保存性がなく、その価値を限られた人しか認めないようなものだ。夏の瀬戸内海の五目釣りの獲物のようなものだ。小さな磯魚は、冷凍しておいても小骨が多くて、誰でもが食べてくれるものではない。釣りを楽しみ、それの鮮度を生かして工夫して食べる。顔と顔のつながった利用だから、話の通じる人びとの間では価値を持つ。しかし、ものとしての魚だけトロ箱に並べられて出荷しても、魚屋さんさえ扱ってはくれない。
 むかしは、といっても30年ほど前には引き売りの魚屋さんがいて、小魚をキレイにさばいて売り歩いてくれた。お店に行っても、魚ごとの食べ方や楽しみ方を教えてくれて、季節の変化が楽しめた。
 そんな昔ながらの魚を売る風景は、スーパーの「さかなサカナさかな♪」というBGMに置き換わり、物語のない切り身や刺身になって盛り付けられるようになった。私たちは便利さを手に入れて、代わりに何を失ったのだろうか。

問われる意識ある消費

 日本は自給率が低下して問題になっている。自給率が足りないなら生産側ががんばればよいのだと、農業や漁業に目が向けられる。しかし、本当は生産されても買い物の対象として流通して行かない生産物が多いのだ。曲がったキュウリや色とりどりな魚たちだ。効率的な販売に適さず、考えない消費者に目も向けられない産物だ。
 自給率問題や今日の食糧高騰の一番の問題は、生産側ではなく、消費の力が落ちて、流通の思うが侭に牛耳られているところにある。「まともなものを、ほどほどに食べる」意識ある消費者が、地産地消のまやかしも見抜いて、旬に採れるもので、旬を生かして味わう「旬産旬味」に立ち返ることが重要だ。
 漁村に出かけて、スーパーで見かけない小魚を買い求め、食べ方を教わって楽しんでもらいたい。それが日本の漁業も、私たちの暮らしも立て直すきっかけになるだろう。


鷲尾圭司さん講演録
(よつ葉連続講座報告集No.3)
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お申し込み:関西よつ葉連絡会事務局(072-630-5610)まで