ひこばえ通信
2006年1月号(第234号)

リレー連載  Non! GMO・産地からの声 第4回
遺伝子組み換えで世界の食糧危機を救えるか?(その2)
田中正治(ネットワーク農縁)

 前号に続き、遺伝子組み換え(GM)推進企業の「GMが飢餓を救う」という主張は本当か、について考えます。
5)バイオ・GM企業のうたい文句は、”GMは農産物を増産する。農薬使用を減少させる”である。果たしてどうか?
アメリカで行われたGM大豆(モンサント社のGMラウンドアップレディー大豆=RR大豆)に関する大学ベースの調査結果である”ベンブルック報告”によれば、(1)収量トップのGM品種と在来種同士を比較すれば、GM大豆の方が、1エーカー当たり平均4.6ブッシェル、すなわち6.7%の収量低下となる。(2)8つの州でのテストでは、収量トップの5品種の平均収穫高を比較すると、在来種に比べて、GM大豆の収穫低下は、平均4.1ブッシェル、すなわち6.1%である。テストされたすべての品種の平均では、3.1ブッシェル、5.3%の収量低下であった。(3)中西部のいくつかの地域で、種苗会社によって売られた在来種のうち、もっとも良い収量のものは、同じ種苗会社が売った同種のGMラウンドアップ耐性品種より収量が10%またはそれ以上多い。と報告されている。またウイスコンシン大学が行った調査では、GM大豆栽培は、2〜5倍除草剤が余分に必要だとの結果が出ている。つまり、”GMは農産物を増産する。農薬使用を減少させる”といううたい文句は、お膝元のアメリカから否定されているのだ。
6)GM技術は、伝統的な品種改良技術とは根本的に違う。伝統的な品種改良技術は、生命の交配(生殖)を通じて品種改良する。それに対してGM技術は、生殖を経ないゆえに、他の生命体にない遺伝子を無理やり挿入し、自然の種の壁を乗り越えるように設計されている。したがって、予測できない代謝障害が起こることは良く知られている。
7)国連が、アフリカのジンバブエのハラレの戦闘で飢餓に陥った人々を援助するために贈ったGM食糧を、ジンバブエは拒否した。「アフリカは世界のゴミ箱として扱われている。安全性の試験もしていない食糧と種子をアフリカに送ることは、親切ではなく、アフリカをさらに海外援助に依存させようとする罠である」(「バイオウォッチ」)と。GM多国籍企業の真のもくろみは、GM種子と農産物をいかなる手段をとっても世界に広め、世界の全ての農地をGM種子と作物で汚染させてしまい、”もうGMの種子、食べ物しかありませんよ、しょうがないでしょう”という状態を作りだしてしまうことではないだろうか。そうすれば、GM企業は「種子の特許権」によって、莫大な利益を継続して手に入れることができるのだ。
8)GM農業は、”世界の食糧危機を救う”どころか、世界の貧富の差を拡大し、農民や土地や食糧を多国籍アグリビジネスの支配下に置き、人々を不幸にするものだ。現在、草の根から起こってきている持続可能な農業、環境保全型農業の成長を妨害するものだ。
9)途上国の一つの発展モデルは、キューバにあると思う。1991年ソ連圏崩壊によって、キューバは、60%の食糧輸入圏を失った。1995年、暴動寸前の深刻な食糧危機に陥ったキューバは、都市農業を含む有機農業への全国民的な参加によって、一人の餓死者を出すことなく危機を克服した。この”カリブの奇跡”は、発展途上国の”希望”として特筆されるし、また私たちの選択肢として考えられてよいのではないか。
(次回は新庄大豆畑トラストの佐藤愛子さんです)