ひこばえ通信
2006年1月号(第234号)

鶏舎の環境や鶏の健康への気遣いは当然
とにかく丈夫が一番
エコファーム丹波・芦田昭也

 この冬は鳥インフルエンザが変異した「新型」の「脅威」が強調され、抗ウイルス薬「タミフル」を備蓄すべきだという報道がされています。しかし、発生を経験済みのこの感染症になぜそんなにあわてるのか? むしろこの際、効率と採算性だけを重視し、感染をグローバルに広げる恐れのある大規模畜産と消費のあり方をじっくり考え直してみるべきではないのか? グローバル化が進んだ製薬資本のワクチンや薬で「脅威」を乗り切ろうとするのは本当の解決とは逆の方向ではないのか? というわけで04年の鳥インフルエンザ発生のとき、移動制限区域となった丹波市春日町にある『平飼い卵』の生産者・エコファーム丹波の芦田さんにお話をうかがってきました。(取材=編集部/下村・上加世田)




▲(上)芦田さん。抱いているのはゴトウモミジ種。(下)三棟並んだ鶏舎には一棟に約1000羽が平飼いで飼育されている。写真の黒い鶏は真中の鶏舎で飼育されているボバンスネラ種。
 「とにかくむなしかったですね。卵を拾ってひたすら焼却処分するのですから。経済的・精神的にもきつかったけど、それが一番きつかった」
 2004年の鳥インフルエンザ発生による被害者は、まず生産者でした。日本では感染による犠牲者を出すこともなく、感染の拡大を発生農場だけに抑え込むことができたにもかかわらず、一人の養鶏業者を自殺に追い込んでしまいました。まるで生産者に発生の責任があるかのように。
 「もちろん人為的なミスは犯さないようにいつも注意していますよ。でも知らないうちに飛んでこられたらどうしようもないですからね。しかし、もし発生してしまったら焼却しかないだろうとは思います。家畜保健衛生所のアンケートにもそう応えました」
 同衛生所の指導による予防対策を実施していますが、ウインドレス(無窓)鶏舎を勧めるなど、この事件を機に国が進めてきた対策には疑問を持っているといいます。
 「8月にイセ(業界最大手)のウインドレス鶏舎で抗体反応が出ました。ウインドレスを勧めてきたことには意味がなかったんとちゃいますか。窓があってもなくてもリスクは同じだと思います」
 国は生き物を工業製品のように扱う大規模畜産のあり方そのものを問題にすることはしませんでした。しかし、ここエコファームのように昔ながらの庭先飼いに近い自然な飼い方で、ウイルスに対抗する免疫力を備えた健康な鶏を育てることこそめざすべき方向なのです。山裾の冷たい風が吹き抜ける鶏舎のなかを元気に走り回る鶏たちを見て改めてそう思いました。うるさすぎて持参したカセットテープに入っていたのはほとんど鶏の声ばかりでしたが……。
 「丈夫が一番。うちの鶏はこのとおり寒いところでほったらかしだから、体力は十分。少々のことではこたえません。人間の子どももいっしょ。外で裸足で遊んどけ、というのが一番いいんでしょうが、なかなかそうも言いにくい世の中になってきましたけどね」
まったく、そういう世の中が「脅威」を生み出すのです。
 「うちも飼料に有用土壌菌を使うなど独自の工夫をしているけど、どこでもこだわってやっていることが一つや二つはあるはず。それを信じるしかないね」と芦田さん。そして私たちは基準でも表示でもなく、そういうこだわりを頑固に守る生産者を「信じるしかない」のだと思います。
 最後にインフルエンザ予防についてですが、ワクチンだタミフルだという前に、何といってもうがいと手洗いが効果があるようです。それからインフルエンザウイルスは石けんに大変弱いことは覚えておきたいですね。