ひこばえ通信
2005年8月号(第229号)

兵庫から 本物は身近な小さなところに
山名酒造株式会社・山名純吾

 京都の北西部、古来より奥丹波と呼ばれてき山間に私たちの蔵はあります。四方を山に囲まれ中央に由良川の流れる盆地。この地は豊富な天然地下水(神池寺山より伏流)と美しく広がる水田、そして厳しい冬の寒さという米の生産・酒の醸造に最適の場所です。
 当蔵はこの豊かな奥丹波の自然の中で、家業の酒造りを先祖から受け継いで参りました。江戸享保元年(西暦1716年)の創業より数えて、私で11代目となります。創業以来変わらぬ手造りの製法。まず、酒米を昔ながらのお釜の蒸気でつやつやと蒸上げる。それから麹造り・酒母造り・三段仕込みと手仕事の作業をひとつひとつ積み重ね、約2カ月かけて出来上がったもろみをゆっくりと三日間かけて搾る。合理化された大量生産とは無縁の世界で、大手の蔵が半日で瓶詰めする量を一年かけて製造・出荷しています。
 以前は日本の蔵元すべてがこの製法で、米と米麹と水のみを原料として酒を仕込んでいました。大きな変化が起こったのは半世紀前の第二次世界大戦の時です。米不足と侵出した中国北方(旧満州)での需要に応えるため新たな醸造技術の開発がなされ、さまざまな添加物(アルコール・グルタミンソーダ・粉飴等)が加えられるようになりました。戦後もこの醸造法は、よりコストを下げて大量生産するために利用され、今では伝統的な酒は日本酒全体の出荷量の6.5%(03年)に過ぎなくなってしまいました。

よつ葉と作った米で新酒鑑評会金賞受賞

 当蔵は日本酒本来の姿である純米手造り醸造の自然酒を造り続けております。地元丹波産の酒米を使用。有機米・省農薬米を意欲のある近在の農家に委託栽培しています。関西よつ葉さんとの米作りから酒造りまでのプロジェクトもその一貫として取り組んでいます。  
 よつ葉オリジナルの酒には「ゆきげしき」と「夢杜氏」があり、いずれも米の生産者・山名酒造・よつ葉連絡会ががっちりスクラムを組んで、栽培から醸造までを手がけています。
 今年の全国新酒鑑評会において、酒米の新品種「杜氏の夢」で仕込んだ大吟醸酒が、金賞受賞の栄誉に輝きました。原料は産地交流会で、よつ葉の会員の皆さんとともに田植え・収穫した僅かな米。山奥でこっそりと造り手と飲み手が楽しみながら作ったものが、全国最高位の賞を取ったなんて痛快です。世の中グローバル化といいますが、なんでも大量に広がればいいってもんでもないでしょう。実際、本物は身近な小さなところで生まれているものです。