ひこばえ通信
2004年12月号(第221号)

海からの便り
第15回 マグロと生物濃縮
鷲尾圭司(京都精華大学)

 子どもたちの好きな食べものランキングを見ると、最近では寿司、刺身という魚が上位にある。学生たちへの調査でも、10年前では肉類ファンが7割を占めていたのが、最近では魚ファンが5割近くになって逆転している。寿司、刺身に人気があるのは、回転寿司などの外食の定着が大きく影響しており、頭や骨の付いた魚の消費はやはり低位に甘んじている。甘い寿司飯に乗った口当たりの良い刺身に子どもたちの食いつきの良さが集中しているようだ。刺身になって寿司ネタとなるには、もとの魚はかなり大きい。マグロ、サーモン、ブリなどが人気の上位を占めているわけだ。手間がかかり小骨の多い小魚ではないことは分かると思う。大型魚に偏った食性の危うさを考えてみよう。

有害成分が10倍に 「生物濃縮」の恐さ

 海の生きものは、大きなものが小さなものを丸飲みにして食ってしまう弱肉強食の食物連鎖が張り巡らされている。小さな生きものの栄養成分が、大きな生きものの身体を作り、不要な成分や役目を終えた成分は排泄される。一般的に見ると、餌を10キロ食べると、身体は1キロ大きくなる。餌の効率は10分の1だといえる。逆に、餌に含まれている有害成分が、大きな生きものに取り込まれて体内に残る場合は、10キロの生きものが持っていたものを1キロの体内に濃縮されて10倍になる。これが「生物濃縮」だ。

「マグロを控えよう」と 言われない不思議

 海に流され、広がり薄まったと思っていた公害物質である有機水銀やPCB、農薬、ダイオキシンなどが生物濃縮によって、再び危険な濃度になる可能性を持っているわけだ。昨年、厚生労働省が「妊娠中の人は、キンメダイとカジキを食べるのを控えるように」という指示を出したことは、この生物濃縮の危険性に他ならない。その時、どうして同じ生物濃縮の位置にあるマグロが指摘されなかったのか不信に感じていた。しかし、牛肉などの偽装事件を見ていると、この場面でもマグロという大手商社が大量に在庫している商材を、汚染ショックでゴミにしないための配慮であったり、所有権を移転するための時間稼ぎでもあったのかと疑いたくなる。
 マグロはおいしくて食べやすいし、冷凍保存が利いて人気商材だ。しかし、子どもたちが争って食べるようなものではないことを肝に銘じよう。40歳以上は大丈夫ですがね。