ひこばえ通信
2004年12月号(第221号)

スローフードは現代のルネッサンス
―イタリア・スローフード協会を訪ねて

よつ葉ホームデリバリー京滋・村上忠政

 時の流れは恐ろしいもので、つい2〜3年前には飛ぶ鳥落とす勢いだった企業でも、今は随分色褪せてしまったなと思うことがよくあります。マクドナルドに代表される『ファーストフード』も、この2〜3年でポジティブからネガティブに人の評価が変化したものの一つです。いつも時間に追われて世界中を飛び廻ってます、なんて言ったりすることが格好良かった時代に『スローフード』という何とも響きに冴えのない言葉を耳にした気がします。

地域の文化を次世代へ 食と味のノアの方舟


▲中央がサルバトーレ・ディヤーコさん

 スローフードは、イタリアのトリノに始まった食文化維持の運動ですが、今日ではアメリカ的価値観に支配されてきた反省としてスローフード、スローライフが語られることが多いようです。
 今回、イタリア、ペルージャのスローフード協会会長のサルバトーレ・ディヤーコさんにお会いすることができ、その歴史、活動についてお伺いしました。スローフードは、1985年にカルロ・ペロリーニとその支持者4人によって発足しました(日本人に認知されるまでに随分時間がかかったようです)。最初は、年寄りのグルメクラブとも言うべきものだったようです。
 ファーストフードの台頭に伴い、食の規格化、標準化が進み、地域独自の農産品は消滅の危機に直面していました。地域の味や文化を救おうという思いから、最初に手掛けられたのがオステリア(郷土料理レストラン)のガイドだったそうです。郷土の産品と料理を紹介、伝統的な食を再評価して消費者と生産者を結び直す試みが始まりました。食材や味覚に対する知識を復活させる『食と味のノアの方舟』というべきものでした。

すべての真実は胃袋を通過する


▲イタリア訪問団報告会(11/23)
右が村上さん

 具体的な活動としては、(1)ラボラトリー(生産者、シェフ等が集い産品を評価する)、(2)マスター(テーマに従っての講演、勉強会)、(3)食育(小・中・高校で食を楽しみながら生産者との交流を進める)、以上3点を実施。また生産・流通・消費者という枠を超えた夕食会も企画されています。「すべての真実は胃袋を通過する」というのが、イタリア人の気質でしょうか。
 感心したのは、農産品の生産制限をしている点です。一時のブームに乗せられて生産量を急増させたりせずに、作ることを長く大切にしています。売上至上主義の日本人には耳の痛い話です。
 スローフードは、食を超えてライフスタイルまで問いかけてきます。お金という価値に替えるためだけに、より速く、より多く物を作り出す。一つ一つの命を無視した作り方から、人の命や心を継承してゆくことはできないでしょう。スローフードは、命の成長とともにでき上がる経過も楽しもうよと投げかけてくるようです。イタリアから2回目となるルネッサンスが提案されています。