ひこばえ通信
2004年8月号(第217号)

海からの便り 第11回 藻場を考える……その1
鷲尾圭司(京都精華大学)

減りつづける 海の中の森―藻場

 日本の沿岸で魚が減りつづけている。乱獲や地球温暖化、有害物による汚染など、魚の減る原因はいろいろ挙げられ、それらが複合もしているだろう。その中で注目する必要のあるものに沿岸の浅い海が開発され続け、海藻の生える場所が少なくなっていることが挙げられる。前回紹介した青潮は、酸素欠乏で動物が生きられないのはもちろん、植物にも同様のダメージを与える。植物も夜には呼吸をするのだから。
 今回からしばらく海の中の森といえる藻場について考えてみよう。

汚濁の指標「透明度」 瀬戸内海は平均五m

 海の中に差し込む太陽の光は、水深が深くなるにつれて弱くなっていく。濁りがあるとさらに弱くなるから、海洋観測指針には、海の透明さを表す指標として「透明度」という測定項目を設けている。直径三〇pの白い円盤をロープにつないで海中に下ろし、水深何mまで見えるのかを表す。瀬戸内海で調べていると、時には一〇mを超えることもあるが、赤潮が出ているときなどは一〇pで見えなくなることもある。平均すると五mといったところだ。大阪湾の奥の方だと二、三mということが多い。太平洋を流れる黒潮は、海水の透明度がよいことで知られているが、実際に高知沖で計ってみて、三〇mを超えたのには驚いた。
 光の届く深さに関心を持つのは、植物の光合成にとって絶対に欠かせないもので、それなしには沿岸の生態系が成立しないからだ。先に紹介した透明度は、海中に差し込んだ光が、白い円盤に反射して、海上で見ている観察者の目に届くものだから、光自身は海中を往復してきたことになる。光の減衰率を海中で一定だと仮定すると、大まかな見積もりではあるが、透明度で表される水深の二倍くらいは光が届いていると推定できる。透明度が平均して約五mの瀬戸内海では、おおむね水深一〇mの海底まで光が届いている訳だ。

埋められてしまった 光の届く海底

 早速、大阪湾の海図を取り出してながめてみると、一〇mより浅い海の少ないこと。水深一〇mの等深線をひくと、ほとんどが港湾や工場立地の埋立地の海岸線と一致する。要は浅い海は埋め立てられてしまっているのだ。結局、大阪湾では光の届く海底は極めて少なくなり、光の届かない海底で占められていることが分かった。
これでは海藻は育たないし、海藻による環境浄化効果も期待できないわけだ。