ひこばえ通信
2004年5月号(第214号)

海からの便り 第8回
ノリの色落ち(その2)
鷲尾圭司(京都精華大学)

おいしさに欠けた今年のイカナゴ

 イカナゴのくぎ煮騒動も終わったが、今ごろ言うのもなんだが、今年のイカナゴはおいしさに欠けたものが多かった。新子の釜揚げという白い姿で食べられた方なら気づかれたかもしれないが、今年は「赤腹(あかはら)」と呼ばれるお腹に赤い色の入ったイカナゴが少なかった。これはイカナゴが食べているプランクトンの種類が影響するもので、油分を持っているミジンコが異常に少なかったためだと思われる。このプランクトンの異変は、先月述べた海苔の色落ちとも関係しているのではないだろうか。

大阪湾奥部の過剰栄養 明石海峡には届かず

 これまで播磨灘における海苔の色落ちは、植物プランクトンの大発生によって栄養分を奪われたせいだと考えてきた。この考え方の土台は、播磨灘にはもともと栄養が豊富にあって、それが植物プランクトンに利用されるか、海苔に利用されるかの配分の問題だと考えていたのだった。しかし、播磨灘よりもはるかに栄養の多い大阪湾側でも色落ちが見られ始めたことと、今回のイカナゴの味が落ちたことを考え合わせると、海そのものの栄養分が少なくなってしまっているのではないかという疑問が浮かんでくる。
 大阪湾でも東半分の湾奥部はいまだに赤潮とヘドロの堆積、貧酸素水の発生など、栄養過剰な状態が続いている。しかし、明石海峡に目を移すと、明らかに栄養分が少なくなる傾向が見て取れる。漁師の話にも、以前は神戸の方から須磨・垂水へとコーヒー色をした赤潮(「にがしお」とも呼ぶ)が岸沿いに流れてきて、明石海峡で潮の流れに巻き込まれて消えていったが、近ごろはそんな潮の動きがみられなくなったという。赤潮はある面では悪者だが、明石海峡のような浄化力の豊かなところでは、大切な栄養補給源でもあった。

神戸空港埋め立てで急速に海洋環境変化

 その赤潮の流れがいつ頃からなくなったのかを聞き取りすると、はじめはポートアイランドの二期工事が始まり、和田岬の線より沖にまで埋め立てが広がり始めたころだといい、最近では神戸沖空港の埋め立てが始められてから急速に変化してきたということが分かった。つまり、大阪湾奥の淀川や武庫川からもたらされた栄養分が、神戸の埋立地でさえぎられ、西に流れてこなくなったのが原因だと考えられるのだ。
 これは、讃岐田先生たちの神戸空港島の環境影響調査結果とも一致している。(つづく)