2003年12月号(第209号)
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■主な記事



米作りは村づくり町づくり
「米政策大綱を考えるシンポジウム」を開催

 11月15日(土)、午後二時より大阪千里中央の千里阪急ホテルで「米作りは村づくり、町づくり―米政策大綱を考えるシンポジウム―」を、関西よつ葉連絡会の主催で開きました。参加者は約120名。全国各地のよつ葉のコメ生産者を中心に、農家生産者と各地の配送センターの職員、会員さんの参加者もありました。

 シンポジウムは、農水省総合食料局食糧計画課の太田さんの「米政策大綱のめざすもの」と題する講演から始まりました。太田さんは戦後の日本の農政の流れから話を始められ、米の需給バランスの調整役として現在まで行われてきた「減反政策」が行き詰まっている現状を数字を挙げて説明されました。
「閉塞感」という言葉で示された米作りの現状を、八年間という中期の年月をかけて、変革させるために、昨年政府が決定した「米政策改革大綱」の特徴は、太田さんの説明によると以下の三点にまとめられます。(1)作らない水田面積の配分(減反政策)から、つくっていい量の配分による生産調整へ (2)地域の主体性を生かす営農プランの策定と、そのプランに一括して支給される交付金による農業支援 (3)米の流通の完全なる自由化の促進と、それによって消費者のニーズに沿った流通への変革。

五名のパネラーの発言を受け、活発に討議

 この講演を受けて、関係各界からの5名のパネラーによるパネルディスカッションが行われました。司会はよつ葉の地場野菜の生産地の一つである京都府日吉町のアグロス胡麻郷の橋本さん。最初に、パネラ15人が各々、自己紹介を含めて米政策大綱への総括的意見を述べることから始まりました。
北海道の米村さんは、大規模米作農家としての立場から、政府の米政策大綱は100点満点の10点とバッサリ切り捨てます。10点だけ評価するところは、政府が公式的には初めて「米を作ってくれるな」という本音を認めたということでした。そして、どんどん値が下がっていく農産物が、更に国際価格と競合させられ続ければ、北海道の農家は農業をやめざるを得ない。政府が理想として掲げてきた北海道の農業ですらこの現状なのだから、日本の農業を本当に守りたいのなら、農家への直接所得補償以外に道はないというのが米村さんの主張でした。そして、農業の多面的機能を考えれば、この農家への所得補償の財源としては「環境税」といった名目の都市住民からの税金を考えてもいいのではないのかと述べられました。
 島根県の山間地、弥栄村の佐藤さんは、集落営農と大豆への転作、味噌・豆腐という農産加工業の協同経営によって、なんとか過疎の村で農業を続けてきた経験から、これまでの減反政策の不備を指摘されました。せっかく農家の協同化をめざして集落営農に取り組んでいるのに、転作奨励金とかの農家補償が、個々の農家に直接手渡されるため、いっこうに協同化の意識が高まっていかないといった指摘で、日本の農村の圧倒的多数を占める中山間地の実情を示す意見だったと思います。
 JA兵庫六甲の本野さんは、兵庫県の農業地域をカバーする大きなJAの営農担当の職員の立場から、農業は「コミュニティービジネス」だという主張を述べられました。人間関係が物のやりとりの基礎にあるはずの人間社会、とりわけ農業の世界が、人間関係をつちかうことを忘れて、モノだけの関係に陥っていることが、「安さ」だけに走る都市の消費者の現状を生み出しているのではないのか。阪神大震災の時、おにぎりを持って被災地を訪れた時の経験も踏まえ、JAが地域の消費者との交流を、より広げ、深める中にしか地域農業の発展もないとの主張でした。
 第一食糧の西田さんは、米の流通に長年たずさわってきた経験から、今回の米政策大綱の実施によって、米の流通への国の管理が弱まって、消費者の要望に応えやすい流通が実現できるのではという期待感を述べられました。しかし他方で、米の消費の低迷は深刻で、日本の食文化の中心であるコメの消費が年々落ちていく傾向には強い危機感を感じるとのことでした。
 北摂・高槻生協の理事で、府会議員の小沢福子さんは、子育てを終えた団塊の世代の一人の母親として、最近の子どもたちや、若い人たちの家庭での食生活が非常に貧しくなっていることに危機感を感じている点をまず指摘されました。そして、こうした都会の人々に、農業の現場をより身近に持ってもらうために、都市農業の再生が大切だと主張され、最近訪問されたというキューバの都市農業の実情にも触れながら、「食から農へ」をめざすには、行政による新規就農の推進と、都市農業支援をぜひ実現していきたいと結ばれました。
 こうした五人のパネラーの発言に対して、会場からは、コメを食べなくなった日本人の食生活の現状についてや、農水省の戦後農政の失敗が今日のコメ作りの危機情況を生み出したという指摘、またWTOという国際機関による日本農業の切り崩しにどう対応するのかという問題提起など、活発な意見が出され、パネラーの方々とも論争が行われました。

農業の未来のためによつ葉ができることは?

 地域によって多様な農業が混在する日本農業の未来を、あまり単純化して論じることは危険でもあるし、現実的でもありません。しかし、日本の農業をとりまく国際環境や世代の交代という時代状況の中で、これからの日本の農業をどう発展させていくのかという課題が、非常に重要な時期にさしかかりつつあるという認識は、会場の論議を貫いていました。関西よつ葉連絡会も、こうした重要な課題にできる限り積極的にかかわって、少しでも役割を果たすためには、どのような取り組みが可能なのかを考えさせられるシンポジウムとなりました。 (能勢農場・津田道夫)