日本のトレーサビリティ法のモデルであるドイツ。ドイツの生産者や加工業者、そして消費者にとってトレーサビリティはどのように受け入れられているのか。そこにはドイツ食肉関係者の切実な思いを感じました。それは日本とドイツとでのトレーサビリティの持つ意味合いの違いにもつながっているような感じです。

ドイツの肉用牛。すべてオス。(去勢はしません。)

  6月5日から12日まで、ドイツに牛肉のトレーサビリティの視察に行ってきました。日本で今年の12月に牛肉のトレーサビリティ法が施行されます。ドイツでは国内で2000年にBSE発生以降、牛肉のトレーサビリティ法が施行されました。BSE発生直後、牛肉の売上が5%までに激減し、危機感を深めた畜産、食肉業者が主体的にそれぞれ自分達の状況にあわせたシステムをつくりあげ、それを政府が認証する形でつくられた法律だったということが、ドイツを訪ねてみてよくわかりました。
 今回訪問した農家や加工場の方も「トレーサビリティにかかる費用はかなりの出費だが、またBSEを発生させてはいけない」という思いは同じでした。消費者も「どこの牛なのかはっきりした牛肉が食べたい。国産の牛を食べたい」との声が多く、ドイツでのトレーサビリティ法の施行は、食肉業界にとっても消費者にとっても必要不可欠な法律であると感じました。
 ドイツでは、牛1頭ずつ出生地や生産者、識別番号などの書かれたパスポートがあり、牛と一緒に動いていきます。牛の所有者が代われば、裏面に所有者名や肥育場所などを記載していき、最終ト場がパスポートを管理します。

 ドイツのトレーサビリティは、牛1頭ごとの個体識別番号で出生地からト場・加工場までの流通履歴を確実に管理することを重視し、事故が起きた場合にはいち早く原因追求ができ、また事故の拡大を防ぐことを目的にしています。そして消費者からの問い合わせがあれば履歴を開示するシステムです。一方、日本で12月から施行されるトレーサビリティは、消費者に履歴開示することで安全をうたって、たくさん売りたいという思いだけが感じられます。牛1頭ごとの出生地からト場・加工場までは個体識別番号で管理しますが、加工する時に何十頭かを一つのロットとして扱い、商品ラベルにはこのロット番号が印字されます。ですからこの番号をインターネットで調べたら、何十頭もの牛の履歴がでてくることになり、「あなたの買った牛はこの中のどれかです」という程度の履歴開示になります。その上、生産・加工の現場の仕事が全く変わらないままで、いかにうまく履歴開示するのかというところに知恵がしぼられているわけで、これでは事故が起こった場合、個体を判別することはまず不可能で、なんともずさんなシステムではないでしょうか。

(ひこばえ 食肉担当 上加世田)



食肉加工場内にて。

「耳標」は生まれたときに
付けられます。

肉牛肥育農家と。

 仔牛が生まれた時に、全ての牛に1頭ずつ10桁の「個体識別番号」を印字した耳標をつけて、牛の生年月日、性別、種別、出生地、飼養地、移動暦、ト蓄年月日などの情報を全て家畜改良センターが記録し管理します。そして牛がト蓄され、枝肉から精肉に加工され販売される牛肉にも個体識別番号またはロット番号が表示され、消費者は小売店の店頭や包装パックに表示された番号を見て、インターネットを通じて牛の生産履歴が調べられる。というものです。個体識別台帳に記載されるのは以下のとおりです。なお、インターネットで公表されるのは(公表事項)の部分です。
(公表事項)
(1)個体識別番号
(2)出生又は輸入の年月日
(3)雌雄の別
(4)種別
(5)母牛の個体識別番号
(6)飼養施設の所在地(都道府県名)
(7)飼養施設における飼養の開始及び終了の年月日
(8)とさつ、死亡又は輸出の年月日
(9)輸入された牛について、輸入先の国名
(10)と畜場の名称及びその所在地
(11)輸出された牛について、輸出先の国名
(同意を得れば公表する事項)
(1)管理者の氏名又は名称
(2)輸入者の氏名又は名称
(3)と畜者の氏名又は名称
(4)輸出者の氏名又は名称
(5)飼養施設所在地(都道府県名を除く)

 これを見て、消費者は何がわかりますか? 管理者・生産者の氏名や名称及び住所はわかりません。また、「個体識別番号」の管理の中で、どのような飼料を与えているのか、牛の病歴などの記載事項がありません。現在、よつ葉では独自のトレーサビリティを考案中です。